昨年2014年のモータースポーツシーンでル・マン24時間耐久レースを含んだ世界耐久選手権(WEC)を日本の自動車車メーカーとして初めて制しチャンピオンチームとなったトヨタはタイトル死守に向けて、4月12日に行なわれる2015年WEC開幕戦シルバーストーン6時間レースに参戦する。冬のシーズンオフに行なわれたテストを順調にこなし、新しいシーズンに向けて全力で臨む。
昨年、トヨタ・レーシングは幸先良く緒戦シルバーストーン戦を1・2位で飾り、その勝利を皮切りに全8戦中5勝を上げた。参戦したレースカー「トヨタTS040 HYBRID」は、省エネルギー規則が施行された新時代のモータースポーツにおける最高性能のレーシングカーであることを証明した。しかし、今シーズンはLMP1クラスで戦うアウディ、ポルシェ、トヨタの3メーカーは、いずれも性能を向上させて参戦、WEC史上かつてない激戦が予想される。
2014年にWECドライバーズ・タイトルを獲得したトヨタ・レーシングのアンソニー・デビッドソンとセバスチャン・ブエミは、開幕戦から新しいチームメイト中嶋一貴を加え、TS040 HYBRID1号車で開幕戦に挑む。また、デビッドソンとブエミは、1905年以来、タツィオ・ヌボラーリ、スターリング・モス、グラハム・ヒルら偉大なイギリス人ドライバーが獲得して来た伝統ある王室自動車クラブ(RAC)国際ツーリストトロフィーの獲得にも挑む。これはシルバーストーンで開催されるツーリングカーレースの勝者に与えられるトロフィーで、2013年からWECの優勝ドライバーに与えられている。
トヨタチームのTS040 HYBRID2号車は今年から、アレックス・ブルツ、ステファン・サラザンにマイク・コンウェイが正式に加わる。コンウェイは昨年彼らのチーム参加して3戦を戦い、バーレーンで勝利を挙げた。イギリス人のコンウェイが加わることで、トヨタチームは2台ともイギリス人ドライバーがステアリングを握ることとなり、シルバーストーンで自国のファンの大きな声援を得ることになるだろう。
TS040 HYBRIDは昨年の仕様から大幅な改良が施され、動力性能と信頼性向上、さらなる軽量化のために80%の部品が新しく設計された。パワートレインは昨年と比べて信頼性を向上し、ハイブリッドユニットは1000馬力を越える出力を誇る。もちろん空力性能にも磨きをかけた。高速コーナーの多いシルバーストーンにはハイダウンフォース仕様で臨む。
一方、独インゴルシュタットに本拠を置く一昨年の覇者アウディも万全の準備で臨む。アウディは、2012年、2013年にシルバーストーンを制した。今年も同大会でシーズン初優勝を遂げるため、アウディスポーツ・チームヨーストは2台の新しいAudi R18 e-tron quattroと6名のドライバーを擁し、万全の体制で臨む。
3月末に行われたFIA主催の公式テストでは、新開発レーシングマシンなど今シーズンのチームを構成するすべてが一堂に会し、公式テストで初めて、最新世代のハイブリッド レースマシンを公開した。最高出力410kw(558ps)のV6 TDIエンジンと、これまでの2倍にあたる4メガジュールを発揮するエレクトリック・ドライブシステムを組み合わせたe-tron quattroが生み出すハイブリッドドライブは、過去最高の低燃費とパワフルな走りを実現する。
4月12日の正午(現地時刻)にスタートするレースに、アウディは2012年のシルバーストーン大会優勝クルーのマルセル・ファスラー、アンドレ・ロッテラー、ブノワ・トレルイエ組がゼッケン7号車を駆る。このクルーは過去3回のル・マン24時間レース優勝経験を持ち、2012年には世界耐久選手権の王者に輝いたチームだ。ロイック・デュバル、ルーカス・ディ・グラッシと英国人のオリバー・ジャービスは8号車で闘う。シルバーストーンからわずか130kmのバーウェルの街に住むジャービスは、FIA世界耐久選手権への年間出場は初めて。
アウディにとって英国は非常に重要なマーケットだ。アウディの英国での販売実績は、前年比11.8%増となる15万8800台を記録。この10年で英国での販売台数を2倍に増やした。アウディにとってドイツに次ぐ、ヨーロッパ圏内で2番目に大きな市場に成長した国で、何としても優勝に導きたいところだ。(編集担当:吉田恒)