SUBARUとSTIのモータースポーツ活動は、かつて1990年代にWRC(世界ラリー選手権)で覇権を競っていた。それが近年、ニュルブルクリンク24時間レース(NBR24)SP3Tクラスに参戦している。
SUBAR WRX STIをベースにしたマシンで参戦しているNBR24は、毎年夏にドイツ・アイフェル地方にある世界で屈指の超難関サーキットと言われるニュルブルクリンクで行なわれる有名な“24時間耐久レース”である。
そこでSUBARU STIは2011年から2年連続でクラス優勝を重ねてきた。ところが2013年には荒天による中止で2位。2014年、NBR24で4位に終わった。
「ニュルブルクリンクの森には悪魔が棲む」と、この24時間レースに挑戦してきた人は口にする。初挑戦で悪魔に出会うことは稀なようだが、幾度も挑戦して勝利を経験したようなチームに突如として悪魔が現れるのだとも。2014年のSUBARU STIのチーム総監督の辰巳英治氏も、そこで悪魔に出会ったひとりなのか。スバル量産車テストチームの代表として、かつてWRCで優勝の常連だったレガシィやインプレッサを育てた“自信の人”が、である。
2014年のチーム「SUBARU STI」の準備は万全に見えた。新型WRX STIを投入し、ニュルブルクリンクのテストでは前年よりもラップタイムを12秒も縮めていた。しかし、実戦では、ライバルがもっと速かった。そこから“焦り”が生まれる。
辰巳氏はSUBARUの広報誌で「ぎりぎりの勝負で余裕を失い自滅した。惨敗です」と述べ、次いで「限度いっぱいまでマシン開発を行ない、チームマネージメントも限度いっぱいに向上させていたかというと、どちらも“この程度で勝てるだろう”という甘さがあった。しかも、ライバルチームを侮っていた」と述懐している。
その辰巳氏が2015年もチームを率いて「ニュルブルクリンク24時間」に挑む。「マシンの完成度をもっと高めていかないと勝てない。自動車メーカーとしてのSUBARUとSTIの力をすべて注ぎ込まないと……」とも。
近年、欧州メーカー、とくにドイツ勢が本気でNBR24に参戦してきた。SUBARI STIのライバルは、市販スポーツモデルとレースの関連性・密接度が伝統的に強い欧州勢のAUDIなどだ。
しかし、辰巳氏は言う。「我々には水平対向エンジンならではの低重心や高いボディ剛性という素材の良さがある」と自信をも示す。今期投入するマシンは、ニュルブルクリンクを走るのに適した左ハンドルへ切り替える。従来から前哨戦を戦ってきたが、今年は4月から欧州入りして、従来以上に万全を期して本番に臨むという。楽観は決して出来ない。しかし、期待も持てるチーム「SUBARI STI」である。(編集担当:吉田恒)