ヤフーやグーグルの検索画面で日常的に情報収集されている人も多いだろう。しかし、スマホの普及もあり、中高生も含めて誰もが手軽に情報を投稿、閲覧できる時代。非常に便利で有意義な反面、本人の許可なく個人情報が勝手に公開されるなど、不毛なプライバシー侵害があるケースも少なくないのではないか。そんな中、検索ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を運営するヤフー<4689>は、先月末、検索結果の削除について新たな基準を公式に発表し、適用を開始した。
新基準によると、検索結果について個人から削除してほしいと求められた場合、プライバシー被害を申し立てている本人の立場や属性を考慮した上で、該当する情報の性質や社会的公益性、そして掲載時から経過した時間の長さなどを踏まえ、削除の必要性が検討されるという。
これは、検索サイトに対する権利保護への訴訟が、近年、国内外問わず増加している事情を省みたものだろう。ヨーロッパでは昨年5月、EUの最高裁判所に相当するヨーロッパ司法裁判所が、原告側の主張を認め、検索結果の削除をグーグルに命じる判決を出した。原告の男性は、かつて社会保険料を滞納して不動産を競売にかけられた過去の経歴が、16年も前の新聞記事としてネット上に掲載されており、それが検索結果に表示されるため、グーグルに削除を要請していたという。この判例は「忘れられる権利」についての議論を欧米で活発にしている。また我が国でも、ヤフーやグーグルに対する訴訟が相継いで起こされている。
ほんの15年ほど前、インターネットなるものがやっと世間に普及し始めた頃、検索画面上には1ページ目から、個人から企業まで大小様々なホームページが入り乱れていた。今、それらのほとんどが「Webサイト」「ブログ」等と呼ばれる整然としたものとなり、検索結果の上位には、大がかりなSEO対策を施した有力大手のリンクばかりがずらりと並ぶ。情報統制されているとまでは言わないが、かつての玉石混淆ぶりが微かに懐かしくもある。
もちろん、名もない個人を傷つけて泣き寝入りさせるような劣悪な情報社会であってはならない。表現の自由や知る権利と「忘れられる権利」とのバランス、これをいかに実現していくか。恐らく第三者の中立的組織の力も借りながら、公正な視線で検索結果上の情報を監視しつつ、削除申請の事情と情報とを一つ一つ検証してきめ細やかに対応していくことが求められるだろう。大手ポータルサイトの抱える課題は大きい。(編集担当:久保田雄城)