4月18日(日本時間)まで開催されていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を機に、中国が人民元の国際化に向け攻勢を強めた。人民元をIMF(国際通貨基金)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に採用することを目指している。
SDRの価値は現在、ドル、ユーロ、ポンド、円の主要4通貨の加重平均(バスケット)で決められている。バスケットは通常、5年毎にIMF理事会で見直しが行われている。今年はその年にあたっている。
G20に先立つ3月23日、IMF専務理事のラガルド氏は中国の李克強首相との会談で、SDR問題について加入審査に前向きに取り組む意向を伝えていた。IMF内では、中国のSDR加入を歓迎する声が多数派との見方もある。人民元がSDRに加われば、財務基盤の強化にもつながるからだ。
英国のオズボーン財務相は4月17日、「英国は人民元の国際化を最前線に立って支援してきた」と述べた上で、「人民元を、ある時点でSDR構成通貨に採用することが理にかなう」と述べた。ドイツの金融当局も人民元のSDR採用を基本的に支持する見解を表明している。
IMFはSDRの採用基準について、その国が国際通貨にふさわしい一定の貿易規模を備え、かつ「自由に取引可能な」通貨であることが条件だとしている。中国はすでに、一定の貿易規模を備えている。問題は、人民元が自由な取引可能な通貨かという点にある。5年前の見直しでは、人民元は自由に取引できないという理由で採用が見送られた。
これまで中国は、為替管理と資本取引規制をある程度維持しながら、漸進的に人民元の国際化を進めてきた。09年7月に、中国と海外の貿易決済を人民元建てで行う「クロスボーダー貿易決済」を試験的に実施し始め、12年2月には全輸出入企業に拡大した。14年2月には、上海自由貿易試験区で区内の企業・金融機関による人民元の国際取引も始まっている。
そして、いま中国は米国などが強く求める改革に前向きな姿勢を採り始めた。中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は4月18日、「中国は人民元の資本勘定の自由度をさらに高める一連の改革を準備している」と語っている。
果たして、人民元はSDRの構成通貨に採用されるのか。今後ますます米中の駆け引きが激しさを増しそうだ。10~11月頃には結論が出ると見られている。(編集担当:久保田雄城)