トヨタ“意志ある踊り場”から2歩踏み出す。メキシコ、中国に新工場建設

2015年04月18日 12:45

toyota

新しく建設するメキシコ工場では、おもに北米向けのセダン「カローラ」を生産。最大で年間20万台の規模の工場とする予定だ。中国・広州では中国で販売する小型車「ヤリス(ヴィッツ)」をメインに10万台の乗用車を生産する。いずれも、これまでの工場建設に比べて4割程度のコスト削減できるという

 トヨタ自動車は今年1月に、2014年暦年ベースのグループ世界販売(ダイハツ工業と日野自動車を含む)が前年比3%増の1023万1000台(前年比103%)になったと発表した。内訳は、ダイハツが91万5000台(前年比105%)、日野が16万8000台(同104%)、そして本体のトヨタが914万7000台(同102%)だ。独フォルクスワーゲン(VW)グループ1014万台(同104%)、米ゼネラルモーターズ(GM)992万4880台(同102%)を抑えて、3年連続の首位となった。

 ところが、トヨタが同時に発表した2015年のグループ・グローバル販売計画は、前期比1%減の1015万台と見込んでいる。年初発表計画が前年を下回るのはリーマンショック後の2009年以来6年ぶりだ。

 いずれにしても、トヨタが「意志のある“踊り場”として、5-10年後の持続的成長に向けて種まきを進めたい」としてからというもの、世間を賑わすランキングには、こだわっていない。「販売台数ランクなんて関係ないよ」とする“中身の充実”を目指す経営理念が感じられた。豊田社長は「利益は目的でなく結果」と言い切った。

 そのトヨタが、検討していたメキシコと中国での新工場建設を決めた。新工場の建設決定は3年ぶり。かつての拡大路線への反省から、新工場建設の2015年度までの凍結を表明していたが、米中での堅調な新車販売を踏まえ、前倒しで解除する。

4月3日に行なわれた首脳出席の幹部会議で、新工場建設案を了承した。今月中旬の取締役会で正式に決める見通しだ。

 新工場の建設地は、メキシコ中央部のグアナファト州と中国南部の広州市だ。2018には稼働させたいとしている。メキシコ工場では、おもに米国で販売するセダン「カローラ」を生産。最大で年間20万台の規模の工場とする予定だ。中国・広州では中国で販売する小型車「ヤリス(ヴィッツ)」をメインに10万台の乗用車を生産するという。中国国内でのトヨタ生産規模は現在103万台ほど。新工場では小型車を生産して中間層の需要を取り込む考えだ。世界最大の自動車市場である中国ではVWに大きく引き離されているが、新工場建設で追い上げを図る。トヨタのグローバルな新工場建設決定は、2012年1月のタイ・ゲートウェイ第2工場以来となる。

 かつてトヨタは、新工場の建設を急速に進めたことが裏目に出て、リーマンショック後に赤字に転落した反省から、前述した“意志ある踊り場”として2013年から3年間、新工場を建設しないと表明していた。しかしながら、米国などの好調な新車販売に既存工場フル稼働では間に合わない状況で、冒頭で記したように、2015年に計画するグループ世界販売台数(ダイハツと日野を含む)が前期実績を下回る要因にもなっていた。同様に市場拡大が続く中国でも今後、生産能力不足が予想されていた。

 トヨタによると、凍結中の省コスト技術の開発で新工場の投資額を4割削減出来る目途が立ち、従来よりも少ない生産台数でも採算が取れるようになったという。同社は「不況時でも急激な業績悪化は避けられる」と判断。新工場の建設再開に踏み切る。投資額は2工場合わせて1500億円になるもよう。(編集担当:吉田恒)