5月1日、空運業界の2015年3月期本決算が出揃った。JALとANAHDの国際線は訪日外国人客の増加でアジアを中心に航空券販売が好調で、円安で円換算の運賃が上がって増収につながっている。原油安による燃油価格下落は「燃油サーチャージ」の減収につながるので業績に対してはニュートラル。一方、国内線はビジネスの利用は堅調でも全体的にはLCC(格安航空会社)に圧迫されて旅客収入が伸びず、収益の増加につながっていない。2016年3月期の今期見通しは、JALは法人税の減税措置が切れて減益見通しだが、ANAHDは経常利益34%増で過去最高益を見込むなど強気。路線のほとんどが国内線のスカイマークは迷走した末に民事再生法の適用を申請して上場廃止になったが、スターフライヤーは旅客減で苦戦しながらも赤字経営を脱した。
■国際線は訪日外国人とビジネス客で旅客増加
2015年3月期の実績は、JAL<9201>は売上高2.7%増、営業利益7.7%増、経常利益11.2%増、当期純利益10.3%減の増収、最終減益。年間配当は前期比56円減の104円だが、昨年10月1日に1対2の株式分割を実施しているので実質48円の増配。訪日外国人の増加で国際線旅客数が伸び、その旅客収入は3.9%増。景況感回復でビジネス客の利用も堅調で、「スカイスイート」のような高価格帯シートの販売が伸びて収益に貢献した。国内線の旅客収入は横ばい。前期にあった受取補償金がなくなった分、最終減益になった。
ANAHD<9202>は売上高9.1%増、営業利益38.7%増、経常利益56.4%増、当期純利益107.8%増(約2倍)の増収、大幅増益。年間配当は前期比1円増の4円だった。新路線の羽田-ロンドン、羽田-パリ線が好調。羽田、成田のラウンジサービスの向上で富裕層顧客の好感度が上がっている。バンコク線、シンガポール線も訪日外国人需要を取り込んで伸びている。しかし旅客収入は国際線の18.5%増に対し国内線は1.2%増と1ケタ少なく、貨物収入も同様。最終利益は企業年金制度変更に伴う特別利益の計上で大きく伸びた。
スターフライヤー<9206>は売上高5.2%増で、営業損益は前期の30.4億円の赤字から2.4億円の黒字に転換、経常損益は前期の26.6億円の赤字から9億円の黒字に転換、当期純損益は前期の30.4億円の赤字から4.3億円の黒字に転換した。設備投資を凍結する2年間の経営合理化計画が功を奏した。年間配当は前期と同じく0円(無配)継続。羽田-北九州線をメインに路線を再編したが旅客数は18.0%減と苦戦。黒字転換には為替差益とともに原油安による燃料費の低減も寄与しているが、旅客システムのアプリケーション・サービス利用契約解約に伴う特別損失の計上で最終利益は抑えられた。
■今期、減収減益のJAL、増収増益のANAHD
2016年3月期の通期業績見通しは、保守的なJALと積極的なANAHDという好対照をなしている。JALは売上高1.2%減、営業利益4.3%減、経常利益3.6%減、当期純利益3.4%減の減収減益見通し。予想年間配当は未定。会社更生法適用企業が再上場すれば法人税を減免する特例措置が今期で切れるため法人税の納税額は約130億円増加する見込みで、最終利益を圧迫する。
ANAHDは売上高4.5%増、営業利益25.6%増、経常利益34.1%増、当期純利益32.5%増と、引き続き増収と大幅増益を見込む。予想年間配当は前期比1円増の5円。新しく就航する成田-ヒューストン線はビジネス需要、成田-クアラルンプール線は訪日外国人需要を取り込み、業績に寄与する見通し。
スターフライヤーは売上高1.8%減、営業利益53.8%増、経常利益30.9%増、当期純利益90.2%増の減収大幅増益を見込む。予想年間配当は0円(無配)継続の見通し。5カ年の中期経営計画を策定し、最初の2年間は経営基盤と基礎体力の強化に注力し、後の3年間は成長戦略で飛躍を目指すという。