ノキアがアルカテル・ルーセントを買収

2015年05月09日 15:49

 フィンランドの通信機器大手ノキアは4月15日、フランスのアルカテル・ルーセントを買収することで合意したと発表した。買収価格は156億ユーロ(165億8000万ドル)。

 ノキアは、2011年まで携帯電話端末で世界シェアトップに君臨していたが、12年に韓国のサムスンに抜かれてから苦戦を強いられるようになり、昨年携帯端末事業をマイクロソフトに売却した。一方、アルカテルは13年に経営危機に陥り、1万人の人員削減を実施すると発表していた。ノキアのラジーブ・スーリCEOは、両社が相互補完できる製品とサービスを保有していると説明している。

 日本国内でノキアは、まずソフトバンク〈9984〉への基地局供給を開始し、その後KDDI〈9433〉、NTTドコモ〈9437〉との取引も始め、マルチキャリア体制を構築している。このようにノキアが基地局に強いのに対し、アルカテルは通信事業者の通信拠点を結ぶ大容量の中継回線に強い。また、ノキアが中国などのアジア地域や欧州に大口顧客を抱えているのに対し、AT&Tやベライゾンなどとの取引があるアルカテルは米国市場に強い。

 アルカテルCEOのマイケル・コムズ氏は、今回の統合について「世界全体に進出する欧州の王者を誕生させる、またとない機会だ」と語っている。

 統合により、両社は固定回線によるブロードバンド、LTEサービスで世界トップに立つ。また両社は、19年末までに9億ユーロの営業コスト削減ができると見込んでいる。

 ノキアは、過去にこだわらない大胆な事業転換で知られる企業だ。もともと同社は1865年に製紙会社としてスタートしたが、1967年に電気通信分野へ進出した。そしていま、同社はこれまでの携帯端末事業を主力とする事業ポートフォリオの転換を進めつつある。同社が現在狙っているのがビッグデータのインフラ整備だ。

 また、統合後にはフランスにIoT(モノのインターネット)のスタートアップ企業を支援する投資ファンドを設立し、フランス国内で5Gとサイバーセキュリティの研究開発に注力する。

 両社が統合効果を高め、大胆な事業転換に成功することができるか、注目が集まりつつある。(編集担当:久保田雄城