日本の技術協力を得て発展してきた中国の宝山鋼鉄が、世界の鉄鋼業界における株式時価総額で、トップの新日鉄住金を追いぬく勢いだ。4月30日時点の時価総額は、新日鉄住金〈5401〉が250億ドルで、宝山鋼鉄が238億ドル。同月28日には、わずか5200万ドル差まで迫っていた。宝山鋼鉄の株価は昨年10月30日以降に人民元ベースで2倍以上上昇している。
宝山鋼鉄は中国の自動車用鋼板の半分を供給しており、この自動車市場での好調が追い風となっている。同社は9月には、中国南部の広東省湛江で建設中の年産1000万トン級の製鉄所を稼働する予定。電機や自動車の工場が集積する広東省では初めての大型製鉄所で、地理的に近い東南アジアへの供給拠点と位置づけられている。
もともと、宝山鋼鉄は新日本製鉄(現新日鉄住金)の技術協力によって発展してきた。日中共同声明が調印された1972年、新日鉄の稲山会長を団長とする日中経済人訪中団が中国を訪問し、新日鉄による武漢製鉄への技術協力プロジェクトが始まった。そして1977年11月、李先念副総理は訪中した稲山会長に武漢への協力に対する謝意を述べるとともに、新しい大型一貫製鉄所建設に対する協力を要請した。これが新日鉄による宝鋼への技術協力プロジェクトのスタートとなった。
そして、1985年に宝鋼第一高炉への火入れが行われた。それから、30年の間に同社は急速に競争力を拡大してきた。この間、2004年には宝鋼新日鉄自動車鋼板有限公司(BNA)が設立されている。
新日鉄住金は韓国のポスコとの競争に加え、宝山鋼鉄など中国の鉄鋼メーカーの追い上げに直面している。とくに、これまで競合がそれほど激しくなかった自動車向け高級鋼での競争が激しさを増しつつある。
新日鉄住金は15年度から大型設備の更新を加速し、さらに従業員の採用も14年度の約2倍に増やす方針。宝山鋼鉄の追い上げをかわすことができるか、注目が集まっている。(編集担当:久保田雄城)