新電力へ切り替え加速 大手電力会社は原発頼みのままか

2014年12月21日 19:12

 電力市場の自由化が加速している。九州電力<9508>との契約を打ち切り、特定規模電気事業者(新電力・PPS)へ切り替えた九州の企業や自治体は約4,600件(11月1日時点)に達していたことが、12月9日に明らかとなった。2013年から倍のペースで増加しており、今後もPPSへの移行が激化していくものと思われる。

 電力の自由化は00年に電気事業法が改正されたことに始まり、既存の大手電力会社(北海道電力<9509>、東北電力<9506>、東京電力<9501>、北陸電力<9505>、中部電力<9502>、 関西電力<9503>、中国電力<9504>、四国電力<9507>、九州電力、沖縄電力<9511>など)以外のPPSの市場参入が、段階的に認められるようになった。実質的に独占状態であった電気事業が市場開放されるという流れとなり、電気料金の引き下げや、電力供給の安定化に期待がかかっている。

 05年からは工場や、ビル、デパート、スーパーなどが対象となる「高圧」50キロワット以上に限り、PPSとの電力契約を認めるようになった。さらに16年4月からはコンビニや事務所、家庭向けの50キロワット以下の「低圧」も対象としていく方針で、実現すれば完全自由化となる。

 「低圧」が占める電力量は、国内全体の4割を占めており、販売売上では5割に迫る。大きな市場となる「低圧」の開放を前に、新規事業者も増加。発電事業では、鉄鋼会社や石油会社などが、コストの低い石炭火力やガス火力発電所を建設する計画を進めている。価格競争により、近い将来、電力価格が下がることは確実だろう。

 その一方で、大手電力会社はかつてないほどの厳しい岐路に立たされている。九電では原発の長期停止により、火力発電の燃料費などの負担が増大した。そのため昨年、法人向けなどの大口電気料金を平均11.94%値上げし、さらに家庭向けでも6.23%の値上げに踏み切った。しかしこの影響により、法人契約件数は急激に減少。16年からは家庭向けでも顧客離れが始まることが予想されている。衆院選で自民党が圧勝したことにより、原発再稼働の可能性も高まったが、原発ありきの大手電力会社の体制そのものを考え直す必要に迫られているのではないか。(編集担当:久保田雄城)