上に伸びはじめた日本の住宅。注目が高まる多層階住宅のメリットとは?

2015年06月06日 20:09

s_v_plaza01

相続税・贈与税の税制改正によって注目の高まる多層階住宅。パナホームの体感型の営業拠点「Vieuno Plaza」など、大手メーカーは営業体制を強化して対応にあたっている。

 日本の住宅事情にちょっとした変化が起きはじめている。きっかけは、今年1月に施行された相続税及び贈与税の税制改正だ。この改正で基礎控除が大きく減額されたため、相続税の申告が必要となる人の割合が高くなった。今までは税金を払う必要がなかった人も、課税されるようになったのだ。

 税金は国民の義務とはいえ、払わずに済むものなら少しでも節税したいのは、誰しもが思うところだ。とくに土地にかかる税金負担は、地価の高い都市部ほど深刻で、大切な資産である土地を守りながら、子や孫の世代にできるだけ負担をかけずに継承したいと考えるのは当然だろう。税金を払うために資産を手放す羽目になったら、目もあてられない。

 そこで注目されているのが、今回の税制改正で基礎控除額とともに改正された「小規模宅地の特例」制度だ。小規模宅地の特例とは、被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業用または居住用に使用していた土地で要件を満たす場合は限度面積までの部分について、評価額を50%~80%減額する事ができるというものだが、今回の改正により、居住用の宅地等(特定居住用宅地等)の限度面積が改正前の限度面積240㎡(減額割合80%)から限度面積330㎡(限度割合80%)に拡大された。また、最大400㎡まで限定的に認められていた併用適用が、居住用宅地と事業用宅地の併用に限り、完全併用(居住用330㎡+事業用400㎡=730㎡)に拡大され(貸付用除く)、それぞれの限度面積まで適用できるようになった。

 この特例を上手に利用し、賢く節税する方法はないものか。その一つの答えとして注目されているのが「上に伸びる」、つまり多層階住宅という考え方だ。従来の日本家屋のスタンダードは、平屋、もしくは2階建ての木造家屋。鉄筋造の住宅が増えた近年でも、せいぜい3階建くらいが一般的な選択肢だった。しかし、建築技術の発展によって、狭い土地でも4階建てや5階建ての住宅の建築が可能になっている。これを上手く利用して、「自宅+賃貸」併用住宅に建て替えると、上層階で親世帯と子世帯が暮らし、下層階を賃貸にして家賃収入を得るという事ができる。建築資金は通常よりもかかるものの、家賃収入が順調に入れば月々のローンの返済額を大幅に減額することも可能だ。

 さらに、相続税評価が大幅に軽減されるほか、固定資産税の軽減や、条件によっては不動産所得がマイナスのとき、所得税が軽減される場合もあり、大きな節税効果が期待できる。

 そこで今、大手メーカーを中心に多層階住宅の提案が活発化している。例えば、ダイワハウス<1925>もマンション、オフィスビルで培った高層建築のノウハウを活かし、2013年から同社初の5階建て住宅「skye(スカイエ)」を発売しているし、積水ハウス<1928>の「ベレオプラス」はエレベーターを標準装備するなど高級路線で人気を博している。

 中でも、とくに多層階住宅に力を入れているのがパナホーム<1924>で、東京都新宿住宅展示場内に、店舗・事務所併用住宅「Vieuno PRO」を採用した日本初の6階建モデルハウスを開設し、大きな話題となっている。また、同社は多層階住宅の営業拠点「Vieuno Plaza(ビューノプラザ)」を、新宿展示場のモデルハウス内に加え、台東区と神奈川県横浜市と併せて3拠点を一斉にオープンした。

 すでに、2014年から営業を開始している東京都豊島区・中野区、神奈川県川崎市の3つの「Vieuno Plaza」と合わせ、全6拠点による営業活動を展開し、年間180億円の受注を目指すという。

 「相続税なんか、うちには関係がない」と思っていたのに、今回の税制改正でいきなり課税対象となって戦々恐々としている家庭も多いことだろう。しかし、考え方を変えれば今まで「うちには関係ない」と思っていた賃貸物件のオーナーになれる大きなチャンスでもあるかもしれない。いざというときに焦って損をしないよう、そして大切な資産を守るためにも、まずは早い内に専門家に相談してみることが重要だ。(編集担当:藤原伊織)