世界最大級の総合オンラインストアAmazonの日本法人であるアマゾンジャパン株式会社は6月30日、積水ハウス株式会社<1928>及び大和ハウスリフォーム株式会社、株式会社ダスキン<4665>と共同で記者会見を開き、アマゾンが新たに開設した「リフォームストア」に3社が参入することを発表した。
Amazonは12年10月に同社サイト上にて住宅建築やリフォームに必要な商品を特集・販売する「新築・リフォームストア」を開設し、住宅用設備や建築資材、エクステリア商材などの販売を行ってきた。当初はTOTO<5332>やINAX、カクダイなどのブランドを中心に約7万点のアイテム数でスタートしたが、14年にはアイテム数が100万点を超えるなど、順調に拡大を続けている。
今回の大手住宅メーカー参入の大きな特徴は、住宅関連の商材のみの販売ではなく、「住宅リフォーム」という商品と工事のパッケージが商品となる点だ。
例えば、積水ハウスグループの積和建設18社が出品するのは、キッチンやユニットバス、洗面まるごと、トイレまるごと+断熱内窓などの比較的小規模なリフォームメニューをパッケージ化した「定額パッケージ型リフォーム」。同社では最大エリアとなる21都府県で、最多の4011品目(11アイテム191品目×21都府県)を取り扱う。
アイテム数はもとより、特筆すべきはリフォーム業界では異例の「定額」制が導入されるということだ。リフォームは商品代以外に工事費が必要となるが、現場の状況や施工する提携工務店の地域でも異なるため、全国一律価格にするのは困難で、別途見積となることがほとんどだ。また、元からある住宅設備の解体撤去や水道、ガス、電気工事が伴うことから、新築工事とはまた異なる工事費用の見積もりが難しいという課題があった。ところが今回、全国に展開する積和建設のグループのネットワークと同社グループが蓄積してきた膨大なリフォーム施工実績のデータを活用することで、工事費も含めた「定額パッケージ型リフォーム」を実現している。価格が明確なだけでなく、決済までネット上で完結できるので、従来の店頭で依頼するスタイルよりも格段に手軽で便利。リフォームに対するハードルが大きく下がることで、潜在需要の喚起が期待される。
さらに積水ハウスグループでは、これに合わせるように新たにリフォームの統一新ブランド「Re:QUEST」を立ち上げ、リフォーム、リノベーションニーズの掘り起こしを図る。同社は4年連続でリフォーム業界で全国トップの実績を維持しており、2014年度決算では2位の1059億円を大きく引き離す1341億円の売上高となっているが、事業の8割以上が同社の顧客か取引先からの紹介だった。これを今回のAmazonへの参入をはじめ、統一新ブランドを展開することで、リピート客、一般消費者へのアピールを強化し、一般客の割合を5割程度にまで拡大することを目指すという。これらに加え、コンサルティング型の中規模リフォームや大規模リノベーションを強化することにより、2016年度の売上目標を230億円増の1570億円とし、3年後をめどに2000億円への拡大を目指す。
大和ハウスリフォーム(株)は、積水ハウスと同じく洗面やバスユニットを定額で、という点は同じだが、床下点検ロボットでの建物点検などをセットにしている点が特徴といえる。とはいえ、カバーしているエリアや商品ラインナップは積水ハウスとは大きく引き離されており、これからどこまで伸ばしていくのかが注目される。また、ダスキンは「リフォームストア」の存在としては異色だが、ハウスクリーニング、エアコン洗浄といった身近なメニューを統一価格で提供するのが売りだ。もうひとつユニークなのが、ギフトとしても扱える。離れて暮らす親への感謝のギフト需要などを狙うという。これまでこうした生活サービス業界は、ローカル密着の薄利多売型のビジネスモデルと思われていたものが、全国区のネット販売ビジネスに乗ってきたことは新しい市場が広がる予兆を感じさせる。
一昔前はネットで商品を購入することに抵抗のある人も多かったが、携帯電話やスマホなどの普及も手伝って、その垣根は格段に下がっている。いくら大手企業が提供している商品やサービスといっても、以前なら数十万円もの契約をネットで済ませるなんて考えられなかった。そういう意味でも、今回のネットリフォームは満を持して登場したビジネスといえよう。今回のネットリフォームビジネスが上手くいけば、住宅業界はもちろん、オンラインストアの未来も大きく変わることになるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)