民主党の枝野幸男幹事長は30日、自民党の大西英男衆院議員が安保法案に批判的な報道機関に「懲らしめなければいけないんじゃないか」などと記者団の質問に答えたとの報道を受け「党が違うとはいえ、同じ国会議員として大変恥ずかしい、情けない発言だ」と懸念した。
枝野幹事長は「なぜ、一連の話が多くの皆さんから批判され不信を持たれたのか、本質を全く理解していないことが確認された」とし「安倍総裁を始め自民党がどういう対応をするか厳しく見守りたい」と自民執行部の姿勢を注視するとした。
大西議員は自民党若手の国会議員の勉強会(文化芸術懇話会)でマスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなることが一番。経団連に働きかけてほしい」と発言したとされ、党の執行部から厳重注意されていた。
大西議員は30日午後8時にアップした自身の「携帯日記」で「私は政府や政党、政治家が権力を用いて言論を弾圧したり、報道規制したりすることはあってはならないと思っている」と反論し「報道の自由、表現の自由は民主主義の根幹だ。このことは私自身の政治信条でもある」とした。
一方で「朝日新聞のいわゆる従軍慰安婦報道や、今行われている平和安全法制についての戦争への道につながる、徴兵制になるなどのような明らかに事実と異なる報道があった時に、視聴者や購読者の皆さんにしっかりとご判断いただきたいという思いがある」と反論する。
ただ、集団的自衛権の行使容認を含む安保法案については内閣法制局長官経験者らも「違憲」と判断するなど、入口での議論にも決着がない。あわせて、集団的自衛権行使容認の新3要件についても実質、歯止めに実効性を疑う見方があるほか、安倍総理は「徴兵制は苦役なので憲法18条で認められない」とする一方、同じ、自民党の国会議員の中には「徴兵が苦役などとんでもない」と国会審議のなかで発言するなど、大西議員が指摘する「明らかに事実と異なる報道」とは断定できない部分もある。野党から徴兵制について安保法制の国会審議の中で議論になっている。
大西議員は28日アップの同じ携帯日記の中で「文化芸術懇話会での私の発言について、谷垣禎一 幹事長より厳重注意処分を受けた。平和安全法制の国会審議が山場を迎える中で、私の発言で混乱を呼んだことを心より反省し、処分を謹んでお受けした」としているが、反省したのは、発言内容ではなく、国会審議に影響を与えたということらしい。
大西議員はHPで、記者団の取材に応じた内容が産経新聞に載っているとして、電子版へアクセスできるようにしている。そこでは「今の安全保障法制について、まったく事実無根の『戦争に導く』あるいは『徴兵制』。まったく関係ないじゃないか。日本が戦争に巻き込まれないための抑止力を高めようとしているのに、そう報道している一部マスコミがある。こういうことを懲らしめないといけないんじゃないかと。マスコミのやりたい放題じゃないかと。そういうことで何かいいお知恵はありませんかと百田(尚樹)先生にお尋ねした。何か問題ある」と発言した。
問題はある。間違った報道をしているなら、訂正を求めればいいのであって「懲らしめないといけない」ということが国会議員として問われている。戦争に導く危険性はわからないが、戦争に巻き込まれる危険性が高まるのは集団的自衛権行使の場合は抑止力と表裏一体とみるべきだろう。「まったく関係ない」話と言い切れない。大西議員の発言は改めて野党議員から国会でも取り上げられることになりそうだ。(編集担当:森高龍二)