米国の初期品質調査から浮かび上がる日本車の危機とは

2015年07月06日 10:23

画・米国の初期品質調査から浮かび上がる日本車の危機とは

日本車ブランド全般の不具合指摘件数は昨年より改善したものの、29年前に米国自動車初期品質調査を開始して以来、初めて業界平均を下回った。これは、業界全体の改善の速さに十分に対応できていないことを示している。  

 1980年代、日本車は米国において飛ぶ鳥を落とす勢いで、売り上げを伸ばしていった。その結果、米国車の衰退が始まり、それだけでは収まらず日米の貿易摩擦にまで発展していったのだ。しかし、今度は日本車の衰退の始まりともいえるべき現実がCS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的な米国の専門機関、J.D. パワーがまとめた結果で明らかになった。

 米国の自動車初期品質調査で、日本車は、29年前にこの調査が開始されてから初めて業界の平均を下回ったのだ。

 日本車ブランド全般の不具合指摘件数は昨年より改善したものの、29年前に米国自動車初期品質調査を開始して以来、初めて業界平均を下回った。これは、業界全体の改善の速さに十分に対応できていないことを示している。調査の対象となった日本の10ブランドのうち、ブランド別ランキングが昨年より上昇したのはマツダ<7261>、トヨタ<7203>のサイオン、三菱<7011>、日産<7201>のインフィニティの4ブランドに過ぎない。

 J.D. パワーの米国オートモーティブ品質部門バイス・プレジデントのレネ・ステファンズは 「これは自動車の品質をめぐる状況が大きく変化していることを示している。長い間、日本車ブランドは車両品質においては金字塔的な存在と見られていた。日本のメーカーも改善は続けているが、他国のブランド、特に韓国ブランドの改善速度は目覚ましいものがある。大きく改善を進めているメーカーは、従来モデルの改善を速めるのみならず、高品質でより直感的に操作ができるように設計された車両を世に出すために先行して取り組んでいる」とコメントしているが、まさにその通りだと筆者も考える。

 国別の傾向を見ていくと、韓国ブランドの今年の不具合指摘の平均件数は、他国ブランドを過去最大の差で引き離した。欧州系ブランド平均がそれに続き、調査開始以来、初めて日本のブランド平均より高い評価となった。米国ブランドは日本のブランド平均と同じ不具合指摘件数だったが両者が同じ件数となったのは2010年以来、今回で2度目だ。

 こうった事態を日本のメーカーはどう受け止めているのだろうか。ともあれ、日本の基幹産業である自動車業界には、今こそ底力を見せて欲しいと願うのは筆者だけではないはずだ。(編集担当:久保田雄城)