2014年6月、日本の自動車業界の今後を左右する大きな動きがあった。日本自動車工業会に「国際標準検討会」が設けられ、日産自動車<7201>やトヨタ自動車<7203>をはじめとする国内の自動車8社、日野自動車<7205>などトラック4社、さらに二輪車のヤマハ発動機<7272>と川崎重工業<7012>を加えた、全14社がついに、汎用性の高い部品や半導体などの仕様統一に乗り出したのだ。
欧州勢はすでに自動車関連技術の国際規格作りを進めていることから、日本の自動車業界は一丸となってこれに対抗する姿勢だ。重複投資を減らしてコストを大幅に削減することに成功すれば、グローバル市場における日本メーカーの競争力は高まる。国際標準規格を制することができれば、世界の市場を制することも可能だろう。逆に、国際標準規格を欧州勢や他の新興勢力に持っていかれてしまえば、日本の自動車メーカーは日陰に回らざるを得なくなる。まさに、ここが正念場というわけだ。
富士経済が発表している、HV、PHV、EVの世界市場予測によると、2030年にはHVが863万台(12年比5.4倍)、EVは307万台(12年比43.9倍)と今後も大幅な成長が予測されている。現状としてHV市場では日本車が主導権を握っているものの、フォードなど欧米車が激しい追い上げをみせており、予断を許さない状況となっている。日本車勢が優位に立ち続けるためにも、一刻も早いプラットフォームの統一化が求められている。
このような状況の中、日本の半導体メーカーも標準化が進む自動車業界に対応する製品の開発を進めている。ローム<6963>は10月21日、HEVやEVを始めとする自動車の電動パワーステアリング、燃料噴射装置などに使われる高機能な各種マイコンに最適な、システム電源「BD39001EKV-C」の開発を発表したが、この製品の最も注目すべき特長は、様々なマイコンに適応できるように起動シーケンス設定機能を搭載している点だ。
さらに、独自の昇降圧自動切り替え制御方式を採用し、バッテリー電圧が降下するアイドリングストップ後にも安定した電圧供給を可能にし、同時に電力変換効率を従来品比で最大5%と大幅に向上することに成功している。
近年の自動車市場では、低燃費化と二酸化炭素削減の点からアイドリングストップ搭載車が増加傾向にあるが、同製品は昇圧回路と降圧回路を自動で切り替えることができるため、アイドリングストップ後のエンジンスタート時に5V以下となるバッテリー変動、いわゆるクランキング時でもマイコン動作に影響を与えない高性能仕様となっている。
ただ、注意すべきは、これらの日本社製の優秀な車載部品が、決して日本の自動車メーカー向けだけに作られているのではないという点だ。世界の自動車市場が欧州勢に傾けば、それらの技術も当然、そちらに使用されるものとなる。理想はもちろん、車体も車載部品もオールジャパンであることは言うまでもない。それを実現するためにも、欧州勢に先を越される前に1日も早い国際規格の確立に期待したいところだ。(編集担当:藤原伊織)