【今週の展望】上値追いに抵抗する「レジスタンスとの戦い」

2015年07月12日 20:56

 日経平均の10日終値19779.83円のテクニカル・ポジションを確認しておくと、週間騰落759円安のせいで25日移動平均(20304円)も75日移動平均(20021円)も5日移動平均(19972円)も、全て上にある。10日に2万円とは言わないまでもせめて5日線ぐらいは上回っておきたかったが、9日の底値19115円からのリカバリーにそこまでの飛躍を期待するのは酷だっただろうか。ちなみに200日移動平均線は18281円で、こんなに下落してもまだかなり下にある。

 日足一目均衡表の「雲」は19791~20232円で、日経平均は久しぶりに雲の下に沈んだ。今週はこの雲の下限は19791円で一定だが、上限は少し凹んで20137~20148円の間で変動する。雲が薄くなれば突破するには好都合だ。ボリンジャーバンドでは、25日線-1σの20005円と-2σの19706円の間にあり、下よりも上のほうに動きやすい位置にある。

 オシレーター系指標は、19115円まで下げた8日前場は「売られすぎシグナル」の光の洪水になったが、8日後場と9日前場のリカバリーでかなり消灯した。残っているのは-69.2で売られすぎ判断基準の-50を下回っているRCI(順位相関指数)と、-81.0のMACDぐらい。25日移動平均乖離率は-2.58%、騰落レシオは82.7、RSI(相対力指数)は39.7、ストキャスティクス(9日・Fast)は34.9、サイコロジカルラインは6勝6敗で50.0、ボリュームレシオは57.5となっている。それでも全般的に低位なので、上に動きやすいことは確かだ。

 このように、ファンダメンタルズとテクニカル・ポジションをみると今週は「上値追いには好環境。2万円を回復してさらに上が望める」と解釈できそうだが、テクニカル分析には「サポートライン、レジスタンスライン」という重要なものがあるのを忘れてはいけない。前週の大幅下落のおかげで、10日の終値19779円の頭上はレジスタンスラインのてんこ盛り状態になっている。だから今週はドイツ軍ではないが「レジスタンスとの熾烈な戦い」を覚悟しなければならない。

 レジスタンスラインになるのは、各移動平均線、日足一目均衡表の「雲」それ自体とその上限、下限、心理的節目の2万円、そして直近のSQ値である。

 レジスタンス第1軍団が19972円の5日移動平均線で、これは第2軍団の「雲」の下限19791円、「まぼろし」のパワーを早々と奪われた復讐に燃える第3軍団の7月SQ値19849円と〃共闘〃して、10日には日経平均2万円を目指す進撃を食い止めては押し返し、解放記念日に勲章授与ものの〃戦功〃をあげた。

 第4軍団の心理的節目の2万円は8日前場までは頼りになるサポートラインの〃友軍〃だったが、今や強敵に変貌した。第5軍団の75日移動平均線20021円と共同戦線を張るだろう。突破できても、それ自体が大きな抵抗線の「雲」の中での上値追いには苦戦が予想される。10日は20232円だった雲の上限はレジスタンス第6軍団として雲の中最後の抵抗を試みるはずだ。

 雲の向こう側に出たとしても、そこは起床ラッパを鳴らすレジスタンス側の詩人が言うような青空ではない。〃最後の強敵〃第7軍団、25日移動平均20304円が待ち構えているからだ。さらにその上には6月メジャーSQ値の20473円も控えているが、今週はこの第8軍団に遭遇するレベルまで上昇できる可能性は薄いだろう。

 このように軍団が束になって抵抗してくるレジスタンスとの厳しい戦いが待っているので、今週の上値は25日線までたどり着ければ上々の出来で、「雲」の中での悪戦苦闘に終始して、それをなかなか抜けられないとみる。とはいえ下値のほうは、ボリンジャーバンドの25日線-2σの19706円を割り込むようなことはないだろう。前週8日、9日は、上海市場の「どこで下げ止まるかわからない恐怖」に過剰反応した異常事態だったからである。それはもう過去の話。間にEU、ユーロというクッションがはさまるギリシャでは、あれほどの過剰反応は起こさないだろう。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは19700~20250円とみる。前週の10日はあと22円に迫りながら2万円をクリアして終えられなかったが、今週早々に大台を回復すれば、8日後場からの「セリング・クライマックス」は「上海の暴落にうろたえて魔がさした出来事」として過去のエピソードに刻まれる。こんなことは早く忘れていい。下ばかり見ていてもしかたない。1969年にアポロ10号の月着陸船にその名を刻んだビーグル犬のスヌーピーも言っている。「KEEP LOOKING UP…THAT’S THE SECRET OF LIFE…(上を見続ける……それが生きるコツさ……)」(チャールズ・M・シュルツ『PEANUTS』)(編集担当:寺尾淳)