【今週の展望】上値追いに抵抗する「レジスタンスとの戦い」

2015年07月12日 20:56

 今週、7月第3週(7月13日~17日)は5日間の取引。今週最大の国内イベントは14~15日の日銀会合。前週は景気動向指数、景気ウォッチャー調査、国内企業物価指数など経済指標がゾロゾロ悪化し、特に個人消費の減速が明らかになった。庶民の景況感はアッという間に変わる。身近に「景気が悪い」「仕事がない」「カネがない」と急にボヤきだした人はいないだろうか? 日銀が追加緩和を断行するなら今なら効果あり、かもしれない。昨年10月31日の「突然の贈り物」も、直前の日経平均株価は低迷していた。

 世界の株式市場の休場日は、14日はフランス・パリ市場が「革命記念日」で休場。「巴里祭」と呼ぶのは日本だけで、戦前にその邦題をつけたルネ・クレール監督の映画の宣伝で広まったという。17日にイスラム教の「ラマダン(断食月)」が明け、それに関連して16~17日にトルコが「シェケルバイラム(砂糖祭り)」で休場し、インドネシアが「イドゥル・フィトリ(断食明け大祭)」で21日まで連続休場する。17日はシンガポール、マレーシアでもラマダン明けを祝う「ハリ・ラヤ・プアサ」の祝日で休場。大相撲の大砂嵐関は名古屋場所6日目の取組終了後にラマダン明け。

 国内の経済指標は少ないが、14~15日に日銀会合がある。13日は5月の鉱工業生産指数確報値・設備稼働率指数、第三次産業活動指数、14日は6月の首都圏・近畿圏新規マンション発売戸数が、それぞれ発表される。

 13日に経団連の榊原会長がアジアビジネスサミット出席後に記者会見を行う。14~15日に日銀の金融政策決定会合が開かれ、早ければ15日の正午前後に結果が発表され、午後3時30分から黒田総裁が記者会見を行う。上半期の中間評価が発表される。17日に日銀の主要銀行貸出動向のアンケート調査が発表される。

 主要企業の決算発表は、小売や外食など2月期決算銘柄の3~5月期決算の発表が続く。13日はSFOODS<2292>、コスモス薬品<3349>、ガリバー<7599>、松屋<8237>、歌舞伎座<9661>、リソー教育<4714>、津田駒工業<6217>、14日はいちごGHD<2337>、ドトール・日レスHD<3087>、クリエイト・レストランツHD<3387>、サイゼリヤ<7581>、近鉄百貨店<8244>、東宝<9602>、ウエストHD<1407>、タマホーム<1419>、キャンドゥ<2698>、レナウン<3606>、モバイルクリエイト<3669>、グノシー<6047>、古野電気<6814>、ツインバード工業<6897>、リーバイ・ストラウス<9836>、文教堂HD<9978>、15日はウエルシアHD<3141>、松竹<9601>、日置電機<6866>、ブロンコビリー<3091>、パソナG<2168>、ヴィレッジヴァンガード<2769>、アデランス<8170>、ベスト電器<8175>、大庄<9979>、17日は光世証券<8617>。

 今週の新規IPOは1件。16日にアイリッジ<3917>が東証マザーズに新規上場する。東京が本社で、スマホ向け位置連動型プッシュ通知ASP「popinfo」で、オンライン(ネット上)でオフライン(ネット外)での購買やイベント参加などの行動を促す「O2Oソリューション」を提供している。公開価格は1200円。

 海外の経済指標は、15日に集中する中国の経済指標は特にGDPに注目。アメリカは14日の小売売上高、15日の鉱工業生産指数、17日の住宅着工件数が重要。

 13日は中国の6月の貿易収支、アメリカの6月の財政収支、14日はユーロ圏の5月の鉱工業生産、ドイツの7月のZEW景況感指数、アメリカの6月の小売売上高、輸出入物価指数、15日は中国の6月の小売売上高、工業生産高、都市部固定資産投資、4~6月期の国内総生産(GDP)、アメリカの6月の生産者物価指数(PPI)、鉱工業生産指数・設備稼働率、7月のNY連銀製造業景気指数、16日はユーロ圏の5月の貿易収支、アメリカの7月のNAHB住宅市場指数、フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、5月の対米証券投資、17日はアメリカの6月の住宅着工件数、消費者物価指数(CPI)、7月のミシガン大学消費者態度指数速報値が、それぞれ発表される。

 12日の日曜日にEU首脳会議が開かれる。ギリシャ問題はピレウスの子どもたちが泣いても笑っても最終決着。ギリシャお得意の「時間泥棒」はもう、日曜はダメよ。14日にはEU財務相会合が開かれる。インドネシアが政策金利を発表する。15日にFRBから「地区連銀経済報告(ベージュブック)」が発表される。15~16日にイエレンFRB議長がアメリカ連邦議会の下院(15日)、上院(16日)の公聴会に出席して証言する。内容は半期の金融政策についての報告。16日にECB(欧州中央銀行)の定例理事会が開かれ、ドラギ総裁が記者会見を行う。

 アメリカ主要企業の決算は、4~6月期の発表が月末にかけてピークになる。今週は金融関連が多い。14日にジョンソン・エンド・ジョンソン、JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ、ヤム・ブランズ、15日にUSバンコープ、バンク・オブ・アメリカ、インテル、ネットフリックス、16日にゴールドマン・サックス、シティG、シュルンベルジェ、イーベイ、17日にGEが発表する予定。

 前週の東京市場は日経平均が427円安、264円高、638円安、117円高、75円安という乱高下、波瀾万丈、疾風怒濤の一週間だった。6日はギリシャ問題のこじれ、8日と9日の前場は下げ止まらない上海市場が大幅安の元凶だったが、揺れ動く世界をよそに無風と思われてきた国内経済も、景気動向指数、景気ウォッチャー調査、国内企業物価指数などの指標が変調をきたしていた。

 そのギリシャ問題は12日のEU首脳会議で「最終決着」するとEUのトゥスク大統領が宣言した。引き延ばし戦術を駆使する「時間泥棒」のギリシャ政府にはそれが効果的だが、東京市場は13日に三たび「月曜日の斬り込み隊長」としてリスクの矢を正面から受け止めるめぐりあわせになった。上海市場はなりふりかまわぬ「下落防止策」でようやく下げ止まって上昇したが、今週は中国の経済指標の発表が多いので油断ならない。アメリカは利上げ時期をめぐる思惑が微妙に交錯しても、金融企業の決算にオーバーに反応しても、大きな流れは変わらないだろう。

 一方、国内は経済指標の発表が非常に少なく、決算発表も前週ほどの大物はなく、日銀会合もその結果で株価が上昇することはあっても、下落はまずない。ギリシャと中国のリスクさえうまく乗り切れば、日経平均の2万円回復は十分期待できるだろう。