鈴鹿8耐、ヤマハが19年ぶりに念願の優勝を果たす

2015年07月26日 23:22

鈴鹿8耐でヤマハが19年ぶりに念願の優勝を果たす!

19年ぶりに優勝したヤマハファクトリーレーシングチーム。

 7月26日に第38回鈴鹿8時間耐久ロードレースの決勝戦が開催された。

 午前11時半の気温は35℃、路面温度54℃という酷暑の中、予選で選出された70台が、ル・マン式でスタート。ホールショットを獲得したのはTeam KAGAYAMAの清成龍一。ポールポジションだったヤマハファクトリーの中須賀克行は、エンジンがかかりにくかったせいで20番手と大きく出遅れた。

 一周目ではトップのヨシムラのA・ロウズに、ハルクプロの高橋巧、モリワキと続き、ヤマハファクトリーは11番手まで追い上げを見せた。

 ファステストラップを叩き出すヤマハファクトリーの中須賀は、じわりじわり追い上げて14周で周回遅れを利用して3番手に。前を走る昨年優勝したハルクプロの高橋巧の後ろにピッタリとつきながらも、無理をしない走りで燃料とタイヤを温存していた。

 24周を終えた時点でトップのヨシムラ、2番手のハルクプロがピットインするものの、3番手のヤマハはピットインせず28周まで走ってB・スミスにバトンタッチ。去年は燃費の悪さがネックだったYZF-R1だが、新型になったことで燃費が飛躍的に向上したことを証明した。だが、ピットストップがハルクプロより6秒ほど遅く、20秒もかかる。なかでもヨシムラの13秒というのは驚異的なタイムだ。そんなヨシムラだが、津田拓也が130Rでコースアウトし、4番手まで順位を下げた。

 昨年の王者ハルクプロのケーシー・ストーナーが転倒、大破しリタイア

 トップを走行していた第2スティントである、ハルクプロのケーシー・ストーナーがヘアピン手前の路面のうねりにフロントタイヤを取られ、オーバーランして転倒、マシンはクラッシュパッドに当たり宙を舞い大破してコース上に横たわった。セーフティカーが入り、これでハルクプロの3連覇の夢は儚くも消え去った。

 36周からリスタートとなったが、41周目にしてヤマハファクトリーのB・スミスがついにトップに浮上。2番手はTSR Honda、3番手にはヨシムラ、4番手Team KAGAYAMA、5番手モリワキの順。

 気温は36℃、路面温度は61℃とさらに上昇し、集中力を保つのが困難な状況で加賀山就臣がシケインで転倒。さらにスプーンカーブでNANKAIBUHIN O-TEC SUZUKA RACINGがハイサイドで大破。これで2度目のセーフティカーラン。

 80周まで前半のトップ争いはヤマハファクトリー、ヨシムラ、TSR Hondaの三つ巴。4番手のTeam KAGAYAMAまでが同一周回であとは周回遅れとなった。その後、バナーレーシングのマシンが白煙を上げ、3回目のセーフティカー。この間にヤマハファクトリーは中須賀に交代するも、セーフティカーが入る直前でピットインしたヨシムラがトップに。しかし92周でヨシムラ津田拓也が転倒し、フロントスクリーンを破損。これでヤマハファクトリーがトップの独走となり、周回遅れをパスしながらも9秒台を連発。

 スタートから4時間が経過したころに、スプーンカーブで転倒があり4回目のセーフティカー。リスタートはヨシムラの津田拓也、TSR HondaのJ・フックの2番手争いとなった。さらに5回目のセーフティカーが入り、ヨシムラがピットインして、フロントカウル交換のタイムロスでトップ争いから外れ、3位にはTeam KAGAYAMAが浮上。

 116周を終え、ヤマハファクトリーは中須賀からB・スミスに交代するが、なんとイエローフラッグ無視のペナルティとして、30秒のストップ・アンド・ゴーが課された。ここまで順調にいっていたヤマハだっただけに痛恨のミス。これによってTSR HondaのD・エガーターがトップに立った。だが、B・スミスの猛烈な追い上げでまたしてもトップに返り咲き、ヤマハファクトリーが独走体制を固める。

 179周、残り1時間となった時に、TSR HondaのD・エガーター、3番手のTeam KAGAYAMAの芳賀が最後のスティント。185周、残り45分でヨシムラの津田が最後のスティント。195周、残り24分でヤマハファクトリーはリアタイヤだけを交換し、B・スミスに最後のランを託す。その直後にヘアピンで転倒したマシンがあり、6回目のセーフティカーが入った。

 残り10分、2番手に半周差をつけた余裕のヤマハファクトリーだが、B・スミスは周回遅れを果敢にパスし、204周してついに念願の優勝を果たした。2位はF.C.C TSR Honda。3位はTeam KAGAYAMA。プライベーターながら加賀山は3年連続の表彰台に上がった。

 「勝つためにファクトリーで、MotoGPライダーを呼び、万全の体制だったから正直プレッシャーでした。彼らに助けられたし、新型R1も良かった」と、表彰式での中須賀克行選手。
 
 「最終コーナーに入ってきた時に、みんなの応援に励まされ、一生忘れない思い出ができました。勝てたのはナカスガサーンのおかげです」ブラッドリー・スミス選手。

 「本当に夢のようです、涙が止まりません。チームメイトもヤマハも最高です!」ポル・エスパルガロ選手。

 「一番高いところに上げてもらって感無量です。ライダーとして上がりたかったけれど。来年もまた連覇します!」吉川和多留監督

 ■第38回鈴鹿8時間耐久ロードレースのトップ10
 1.YAMAHA FACTORY RACING TEAM 204LAP
 2.F.C.C. TSR Honda 1.17.411
 3.Team KAGAYAMA 1LAP
 4.SUZUKI ENDURANCE RACING TEAM 2LAP
 5.YOSHIMURA SUZUKI Shell ADVANCE 3LAP
 6.GMT94 YAMAHA 3LAP
 7.HONDA ENDURANCE RACING 3LAP
 8.Honda Suzuka Racing Team 4LAP
 9.Team GREEN 5LAP
 10.MotoMap SUPPLY 5LAP

 13年ぶりのファクトリー体制で挑んだヤマハファクトリーレーシングチーム。ヤマハ創立60周年の記念の年だけあって、ヤマハのレースにかける思いが本気だったことを証明してくれた。スタートで大きく出遅れたが、マシントラブルや転倒もなく、30秒のペナルティを課されただけだったのもラッキーだった。今大会は6回ものセーフティカーランがあったが、その間もヤマハファクトリーの選手だけは、身体を小さくして、スクリーンの中にヘルメットを入れて空気抵抗を極限まで下げ、燃料消費を抑えていたのが印象的だった。2人の若いGPライダーがクレバーで落ち着いたレース運びをし、8耐経験豊富な中須賀を含めチーム一丸となったからこそ、優勝を手に入れることができたのだろう。4日間の観客総動員数は昨年を超える12万人で、打ち上げ花火で幕を閉じた。(編集担当:鈴木博之)