相続税制の改正から半年。都市部での対策のポイントは?

2015年08月01日 19:06

相続税

相続税対策での様々な需要に対応する設計自由度がウリの、積水ハウス3・4階建て「βシステム構法」

 平成27年度税制改正によって、相続税の基礎控除の減額や税率の一部が引上げられた。新税制の適用から半年が経ち、その対策による需要増で住宅メーカーの業績にプラスの影響が出はじめているようだ。

 今回の税制改正のポイントは「基礎控除の改正」と「小規模宅地の特例の改正」だ。基礎控除の金額が60%に減額されたため、相続税の申告が必要となる人の割合が高くなった。財務省によると、東京の千代田区、港区、中央区では4人に1人が対象になるとの試算もある。そのため節税対策として、合わせて改正された「小規模宅地の特例」を利用するケースが増加しているのだ。

 小規模宅地の特例とは、被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業用または居住用に使用していた土地で要件を満たす場合は限度面積までの部分について、評価額を50%~80%減額する事ができるというもの。今回の改正では緩和措置として、居住用の宅地等の限度面積が240平方メートルから330平方メートルに拡大された上、居住用と事業用の宅地等を選択する場合の適用面積も拡大され合計適用面積は730㎡となっている。

 これらの改正は市場にどのような影響を与えているのだろうか。消費税の駆け込み需要の反動を受け戸建住宅の建築回復が長引いている中でも、2期連続の増収、増益を達成した住宅メーカー最大手の積水ハウス<1928>では、改正を前にした昨年あたりから、とくに都市部の相続税対策に対応した商品として、3・4階建ての多層階住宅の需要や問い合わせが増えているという。

 今回の改正により、地価が高い都市部では代々受け継いだ土地に住んでいるだけでも相続税の課税対象となりえる。いわば「資産家」とは露とも思っていない「庶民」も考えておかねばならないということになる。そのため3・4階建てで二世帯住宅や賃貸併用住宅などを建築して、「小規模宅地の特例」を活用するケースが増えている。また、単に節税対策というだけでなく、より魅力ある住まいへの需要も高まっており、複合的な住宅を効率よく実現できる「設計の自由度」と「居住性能の高さ」の両立が求められるため、同社の強みが発揮されているようだ。

 今年10月に予定されていた10%への消費税引き上げが2017年4月に延期になったことで、今なら計画をじっくり検討することも可能だ。ここ数年の内にと考えているなら、丁度良いタイミングなのかもしれない。相続税の課税対象となる場合は、どのような住宅が対策として効果的なのかを検討すると共に、その計画に適した構造などをしっかりと確認する必要がありそうだ。(編集担当:藤原伊織)