「侵略」の表現 談話に入れるかどうかは微妙

2015年08月08日 11:35

 安倍晋三総理は14日、戦後70年の談話を出すが、「侵略」の言葉を談話に入れるかどうかは微妙だ。国会答弁でも、これまで一貫して「侵略」には「政治家は歴史に対して謙虚でなくてはならない」などとして否定的な姿勢を見せてきた。

 7日の衆院予算員会でも民主党の玉木雄一郎議員が、70年談話の資料として有識者懇談会が総理への報告書に「満州事変以降の日本について『大陸への侵略を拡大し、世界の大勢を見失い、無謀な戦争でアジアを中心とする諸国に多くの被害を与えた』とされており、(侵略との表記には、懇談会の)16人の委員のうち2人から異論があったといわれるが、有識者会議では侵略と指摘した。総理は満州事変以降の大陸での活動について侵略と考えるか」と質され「行政府の長として、また政治家は歴史に対して謙虚でなくてはならない」と侵略か否かの自身の考えを、いつもの通りに、回避した。

 玉木議員が「16人の委員のほとんどが満州への侵略を拡大したと指摘していることについては、これを重く受け止め、総理としても14日の総理の言葉(70年談話)の中に、反映させる気持ちはないのか」と重ねて質した。

 安倍総理は「概ね委員の方々が認識として合意に達したところとそうでないこととがある。歴史にはいろんな見方、専門家の方々が事実に基づいて、さまざまな議論を深めていくうえにおいては、すべての方々が同じ認識に至っていない部分も当然ある。そういうことも含めて、私は今回の報告書をしっかりと吟味しながら私の考え方として談話にまとめていく」と答えた。安倍総理の答弁からは「歴史に対し謙虚でなければならない」姿勢より、少数派の認識に近いのでは、との印象が強い。

 西室泰三懇談会座長は報告書を総理に手渡した日の記者会見で、先の戦争での侵略について「明らかに、歴史的に侵略が現実にあったと私自身は思う」とした。一方、北岡伸一座長代理は「大部分の委員の意見がそうだったから侵略と書いた。委員の1人から『自分はこれに賛成できない』と。同調される方も1人いた」とした。「侵略」が談話に使用されるかどうか、安倍総理の判断が注視される。(編集担当:森高龍二)