IT専門調査会社 IDC Japanは、国内パブリッククラウドサービス市場予測を発表した。これによると2015年の国内パブリッククラウドサービス市場規模は、前年比29.5%増の2,516億円となる見込み。
従来、IaaS(Infrastructure as a Service)は開発環境や一般消費者向けWebサイト/アプリケーションの稼働環境として利用されることが多く、この動向が国内パブリッククラウドIaaS市場の成長をけん引してきた。一方、2014年以降、既存の業務アプリケーションをIaaS上に実装し、稼働させるクラウドイネーブルドの動向が加速傾向にある。
また、並行して、業務アプリケーションの稼働に必要なミドルウェアやシステムインフラソフトウェアのIaaS上での動作検証やライセンス体系の整備も進んでいます。現在、開発環境/Web向け用途と、既存業務アプリケーションのクラウドイネーブルドが両輪となり、国内パブリッククラウドIaaS市場の成長を促進しているとしている。
一方、国内パブリッククラウドSaaS市場も順調に推移しているという。なかでも、モバイル対応に優れたコラボレーティブアプリケーションやCRM(Customer Relationship Management)アプリケーションは「クラウドファースト」が浸透した。また、SaaS(Software as a Service) ERM(Enterprise Resource Management)アプリケーションも急速に発展している。従来、SaaS ERMは優れた保守/運用性が大きな特徴だった。一方、2014年以降、外部システムとの連携性が向上し、ユーザー企業の利便性を向上している。国内パブリッククラウドSaaS市場は、モバイル対応、システム間連携といった特徴によって成長を継続するとIDCはみている。
これまで、「デジタル産業革命」を起こすことが出来るのは、「高い技術力」「資本力/資金力」と「ビジョン」「強いリーダーシップ」を兼ね備えた「特殊な企業」であると、考えられてきた。一方、パブリッククラウドサービスの発展によって、起業/新規事業に求められる「技術力」「資本力/資金力」の障壁は大きく低下しており、ビジネスアイディアを持つ一般的な「企業」「開発者」がデジタル産業革命を起こすソリューション/サービス(IDCでは、Intelligent Industry Solutionと呼称)を提供できるようになったとしている。
現在のIntelligent Industry Solutionは、モバイルインターネットやソーシャル技術を活用しただけのソリューションではありません。既に先端技術、たとえばビッグデータ/アナリティクスを導入することによって、新しい価値を顧客に提供し、差別化が図られている。したがって、国内パブリッククラウドサービス市場では、先端技術を容易に導入できるサービス、すなわちPaaS(Platform as a Service)の拡充が重要となっているとしている。 (編集担当:慶尾六郎)