【通信業界の4~6月期決算】音声通信の伸び悩みをデータ通信料、コンテンツ収入、投資利益などで補って増収増益

2015年08月15日 20:18

 8月7日、通信業界大手4社の4~6月期決算が出揃った。全て増収増益で、NTT、NTTドコモ、KDDIは2ケタの最終増益、ソフトバンクG(7月から社名変更)は3ケタの最終増益だった。増収増益の原動力はNTTは光回線のデータ通信料、NTTドコモは動画配信などのコンテンツ収入、KDDIはデータ通信料、ソフトバンクGはネット通販企業など海外子会社からの投資利益だった。KDDIの収益の安定性が目を引くが、NTTドコモも最終利益の進捗率が約36%あり、通期業績のV字回復に向けて視界は良好だ。

 ■2ケタ、3ケタの最終増益が揃った好決算

 4~6月期の実績は、NTT<9432>は営業収益2.5%増、営業利益20.4%増、税引前四半期純利益20.0%増、最終四半期純利益29.7%増の増収、2ケタ増益。最終利益は4~6月期としては過去最高を記録した。NTT東西会社は光回線のデータ通信料収入が増えたが、固定電話の音声通信収入は伸び悩んだ。NTTドコモはスマホ向けのコンテンツ配信収入が伸びた。海外では傘下のNTTデータが手がけるクラウドサービスが大きく成長し、円安効果も出て海外売上は約2割増。東西会社でもNTTドコモでも営業費用などコストの削減が進んだ。

 NTTドコモ<9437>は売上高0.1%増、営業利益12.3%増、税引前四半期純利益13.2%増、最終四半期純利益23.8%増の増収、2ケタ増益。前期に導入した新料金プランの影響が続いて音声通信収入は伸び悩んだが、動画配信や通販などの通信サービス「スマートライフ」事業の契約数、コンテンツ収入が順調に伸びて補った。コスト面では設備投資を抑制して利益率が改善している。

 KDDI<9433>は営業収益7.1%増。営業利益19.3%増、税引前利益20.7%増、四半期利益31.2%増、最終四半期純利益29.2%増で増収、2ケタ増益。最終利益は4~6月期としては2年連続過去最高。携帯電話と固定回線をセットで割り引く「auスマートバリュー」を武器に契約者数が伸び、スマホ、タブレット端末の2台目ユーザーが増えてデータ通信料収入も伸びた。端末の販売手数料などコスト削減を進めて大幅増益になった。

 ソフトバンクG<9984>は売上高9.8%増、営業利益7.6%増、税引前利益120.1%増(約2.2倍)、四半期利益124.6%増(約2.2倍)、最終四半期利益175.1%増(約2.8倍)で、増収、大幅増益。契約の純増は前年同期の8万件に対し2万件にとどまったが、国内通信事業の営業利益は携帯端末の販売増などで5%伸びた。中国のEC(電子商取引)最大手アリババ集団の434億円、昨年秋に約700億円を出資したインドのネット通販大手スナップディールの576億円など、投資利益が最終利益の大幅増益に寄与している。

 
 ■株式分割、自社株買いなど株主還元も積極的

 2016年3月期の通期業績見通しは、NTTは営業収益2.3%増、営業利益10.6%増、税引前当期純利益10.6%増、最終当期純利益21.6%増の通期業績見通しも、200円の予想年間配当も修正していない。4~6月期の最終利益の通期見通しに対する進捗率は30.6%だった。7月1日に1株を2株にする株式分割を実施したが、4~6月期の決算発表と同時に上限1000億円(発行済株式の約1%)の自社株買いを発表している。

 NTTドコモは売上高2.9%増、営業利益6.4%増、税引前当期純利益6.7%増、最終当期純利益14.6%増の通期業績見通しも、70円の予想年間配当も修正していない。4~6月期の最終利益の通期見通しに対する進捗率は35.9%と大きかった。加藤薫社長は収益計画に対し順調に進捗していると言いながら、上方修正については「まだ4~6月期決算を終えたばかりで、もう少し注視したい」と述べている。

 KDDIは売上高4兆4000億円、営業利益8200億円、最終当期利益4900億円の通期業績見通しも、65円の予想年間配当も修正していない。今期から国際会計基準(IFRS)を任意適用したため前期と単純比較はできないが、営業収益は実質増収。最終利益は3期連続で最高益更新の見通し。4~6月期の最終利益の通期見通しに対する進捗率は29.3%だった。3期連続2ケタ増益を目指す田中孝司社長は、携帯電話会社が2年単位で契約を結ぶことで利用者が解約をしにくくなる「2年縛り」の見直しに向けて「検討していく」と表明。ユーザーから歓迎されている。

 ソフトバンクGの今期業績見通しは「投資や事業売却が頻繁に起こると想定され未確定要素が多い」として非公表のまま。前期の反動で最終減益が予想されるが、孫正義会長兼社長は「実質的な増収増益基調は続く」と強調している。40円の予想年間配当は修正していない。4~6月期決算発表と同時に上限1200億円の自社株買いの実施を発表した。アメリカでの携帯電話シェアが第4位に後退したスプリントについて孫正義社長は、「売却する気は全くない」「必ず改善させる」と、約2年で業績の立て直しにメドをつけることを表明している。
(編集担当:寺尾淳)