社会進出をはじめたコミュニケーションロボット

2015年08月15日 19:27

pepper

アキュラホームのさいたま新都心展示場内のモデルルームで、接客スタッフとして正式採用される人型ロボット・ペッパー。人工知能の進歩により、ロボットの社会進出が加速度を増してきた。

 近年、ロボットの社会進出が急速に進んでいる。2004年に経済産業省が開催した「次世代ロボットビジョン懇談会」の報告書によると、2025年を目処に我が国でもロボット社会の到来が期待されているが、現実として、その期待以上のスピードで技術開発が進み、ロボットは身近なものになりつつあるのではないだろうか。ロボットといっても、その用途は様々だ。製造現場などで使われる産業ロボットをはじめ、医療分野、セキュリティ分野、災害対策用、公共サービス、最近では、少子高齢化などの問題を抱える福祉や介護の分野でもロボットの導入が盛んになりつつある。

 経済産業省管轄の国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO」による市場予測をみると、現在市場が形成されている分野の成長に加え、サービス分野を始めとした新たな分野へのロボットの普及によって、ロボット市場は2020年には2.9兆円、25年には5.3兆円、35年9.7兆円に成長するとみられている。

 日本製の産業用ロボットは信頼性と耐久性、そしてメンテナンスも含めたパッケージが海外でも高く評価されており、世界シェア1位を誇るが、近年日本国内で注目が高まっているのはコミュニケーションロボットだ。

 1999年にソニー<6758>が子犬型のペットロボット「アイボ」を発売し、定価25万円という高額商品であるにもかかわらず、発売開始からわずか20分で3000台を完売するなど大盛況ぶりを見せて話題となった。あれから16年。コミュニケーションロボットはさらなる進化を遂げている。2010年に富士ソフト<9749>が発売した「PALRO(パルロ)」は、オープンアーキテクチャの汎用品を採用することでコミュニケーション機能と自律移動機能を搭載する高機能性、そして本体価格28万円台という圧倒的な低価格を実現した。また、東京大学とロボットクリエイター・高橋智隆氏率いる株式会社ロボ・ガレージ、そしてトヨタ<7203>が共同で開発した「KIROBO」は、2013年8月、世界初の宇宙飛行士ロボットとして宇宙へ飛んだ。ISSきぼう日本実験棟内で起動確認が行われ、世界で初めて「宇宙でのロボットの発話」に成功している。

 そして今、最も注目を集めているのが、ソフトバンク<9984>が開発した人型ロボット「ペッパー(Pepper)」だ。身長約120cm、可愛らしい子どものようなフォルムだが、その中身は最先端のロボット技術の集合体。喜びや悲しみといった感情を数値化することで、ペッパーの人工知能が善悪を学習し、次のサービスへと活かしていく。さらに家庭や店舗、会社など、様々な場所で活動し、学習したことを「集合知」として、ペッパー同士がクラウドを通じて共有、進化していくのが最大の特徴だ。従来のロボットのようにプログラムで既定された成長ではなく、ペッパーの成長は無限大の可能性を秘めている。

 すでに、多くの企業でペッパーの導入が始まっており、接客された客がSNSに投稿するなど、連日話題になっている。例えば、みずほ銀行<8411>やイオン<8267>のショッピングモール、蔦屋書店<7640>、ユニクロ<9983>などでの接客をはじめ、山梨県立博物館「大化石展」の案内役や、7月1日には東京都港区の「とっとり・おかやま新橋館」で、鳥取県産品の販売や観光PRを行う同県の宣伝部長として、世界初の「ロボット公務員」に任命されている。

 また、8月22日からは、さいたま新都心展示場内のアキュラホームのモデルハウスにも、住宅業界では初めて、接客スタッフとしてペッパーが採用され、常駐することが発表された。同社では、少子高齢化や労働力の減少などの社会問題を背景に継続的な導入を考えており、ペッパーの個性に見合った仕事内容を検討し、将来的には全国に展開するアキュラホームの支店に採用、配属していくという。

 話題作りのための一時的な導入ではなく、アキュラホームのように、コミュニケーションロボットを接客スタッフなどの正規の労働力として採用する企業が、今後は続々と増えてくるのではないだろうか。ロボットが日常的に生活のそばに居る、SF映画のような未来社会が、すぐそこまで来ているのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)