昭和の時代に流行った「モーレツ社員」という言葉は、「会社に滅私奉公するのが当たり前」という価値観も含めて、若者の辞書から消えつつあるようだ。電通総研が実施した「若者×働く」調査によると、多くの若者は「企業戦士」や「モーレツ社員」などの単語を知らないことが分かった。また、「働くのは当たり前だ」と思っている若者が約4割いる一方、「できれば働きたくない」と回答した割合も約3割に上った。
電通の調査は、週に3日以上働く18~29歳の男女3000名を対象とし、30~49歳の男女2400名のデータと比較したもの。現在の雇用形態を聞いたところ、18~29歳では、正社員・正規職員63.6%、契約社員、派遣社員、パート・アルバイトなどの非正規雇用32.1%、フリーランスなどを含めた自営業主が4.1%だった。非正規雇用の割合は男女の差が大きく、男性18~29歳の22.8%に対し、女性18~29歳は42.6%。なお、女性は18~49歳のどの年齢層でも、4割以上が非正規雇用だった。
働く上での不満を聞いたところ、18~29歳では「給料やボーナスが低い」(50.4%)、「有給休暇が取りづらい」(23.8%)、「仕事がマンネリ化している」(17.6%)が上位に挙がった。「給料やボーナスが低い」はどの年代においても共通して高いが、「有給休暇が取りづらい」「通勤時間が長い」「残業時間が多い」という項目は、年代が若いほど不満を訴える割合が高い。
こうした不満からか、働くことへの意識については、18~29歳の約4割が「働くのは当たり前だと思う」(39.1%)一方、「できれば働きたくない」(28.7%)も約3割に上った。さらに「働き方に関連した言葉」について知っているかどうかを聞いたところ、「企業戦士」の認知率は、40~49歳が53.6%であるのに対し、18~29歳は31.2%と少数派。「モーレツ社員」は、40~49歳の認知度が54.4%に対し、18~29歳はわずか21.7%だった。
高度成長期、「企業のために粉骨砕身で働き、熱中するサラリーマン」の像を表現した言葉を「知らない」若者たち。言葉は時代の価値観をあらわし、価値観は次第に変わっていく。「多様な働き方」への過渡期でもある現代社会では、「モーレツ社員が当たり前」だった年長世代と、若者の意識ギャップが大きくなるのも仕方がないだろう。(編集担当:北条かや)