ロームが太陽光発電のパワーコンディショナーや産業機器、サーバー、エアコン等の電源回路向けに、業界最小の順方向電圧(VF=1.35V)を実現した第2世代SiCショットキーバリアダイオード「SCS210AG/AM」(600V/10A)を開発した。
近年、産業機器や太陽電池、電気自動車、鉄道などパワーエレクトロニクスの分野では、Siデバイスよりも電力変換時の損失が少なく、材料物性に優れたSiC(シリコンカーバイド:炭化ケイ素)デバイス/モジュールの実用化に対するニーズが高まり、徐々に製品化が進んでいる。
しかし、SiC-SBDはすでに世界的に広く量産されるようになったものの、定常損失となる順方向電圧は、1.5Vで横並びの状態が続いており、市場では更なる低損失化のために順方向電圧の低減が喫緊の課題となっていた。
こうした中、半導体メーカーのロームが、太陽光発電のパワーコンディショナーや、産業機器、サーバー、エアコン等の電源回路向けに、業界最小の順方向電圧(VF=1.35V)を実現した第2世代SiCショットキーバリアダイオード「SCS210AG/AM」(600V/10A)の開発を発表した。通常、順方向電圧を低減すると逆方向リーク電流が増加してしまうものの、ロームではプロセスとデバイス構造の改善によってリーク電流を低く保ったまま順方向電圧の10%低減に成功。特に順方向立ち上り電圧が低く、一般的に使用されることの多い低負荷状態での効率改善が期待されるという。
2010年にSiC-SBDやSiC-MOSFETといったSiCデバイスの量産に成功、2012年3月には世界で初めてフルSiCパワーモジュールの量産に成功するなど、業界をリードする開発を進めてきたローム。今回発表された新シリーズでは、まず600V-10A品の量産を開始し、順次ラインアップを拡充。数ヵ月以内に1200V 品の量産も開始する。
6月4日、京都大学が独自のSiCの結晶成長技術と加工技術、電界集中を緩和する構造の採用、および表面保護技術を集約することで、世界最高レベルの耐圧2万ボルトの半導体素子の製作を実現したと発表した。2万ボルト以上の耐圧は、SiCに限らず、いかなる半導体素子の中で最高の耐圧を達成しているという。こうした研究やロームの新製品に見られるように、SiCにはまだまだ開発の余地、潜在能力が備わっている。他分野では他国企業に後背を期している日本であるが、パワー半導体の分野では先進していると言えるであろう。このまま世界を牽引していけるよう、これからの研究開発にも期待したい。