【MotoGP第12戦】イギリスGP 雨の波乱を制しV・ロッシ今季4勝目

2015年08月31日 12:53

イギリスGP

V・ロッシとM・マルケスの鍔迫り合い

 8月30日、MotoGPは第12戦目、イギリスGPの決勝を迎えた。舞台となったシルバーストーンサーキットは全長5,900m。今シーズンMotoGPが開催される中では最長のサーキットだ。ハイスピードバトルが繰り広げられる高速サーキットだが、イギリス特有の不安定な天候に左右されやすく、コンディションによっては非常に難しいレースを強いられることもある。

 今回のイギリスGPはまさにその天候に左右される大波乱の展開となった。

 厚い雲に覆われ、今にも雨の落ちてきそうな不安定な空模様の中迎えた決勝。一旦ドライレース宣言がなされたものの、レース直前のウォームアップラップの途中で雨が落ち始めるという予想外の事態。全員がピットに戻りドライマシンでのレースを諦め雨用のマシンに乗り換えることになってしまった。

 これによってレーススタートが遅れることとなり、ウェットコンディションの下、再スタートを切ることとなった。

 中途半端な雨に悩まされ、また気温16度、路面温度18度の低温という難しいコンディションで再スタートとなった決勝、好スタートを切ってホールショットを決めたのは2番グリッドスタートのホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)だった。これに予選でポールポジションを獲得したマルク・マルケス(レプソルホンダ)が続いたが、レース序盤は混戦模様。ポル・エスパルガロ(モンスターヤマハテック3)、バレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)、ダニ・ペドロサ(レプソルホンダ)が入り乱れ、順位が目まぐるしく変動した。

 レース2周目にはV・ロッシが先頭に立ち、2番手をM・マルケスが追走。ホールショットを決めたJ・ロレンソは3番手争いまで後退した。

 レースは雨の影響もあり、序盤から波乱の展開となった。スタート直後の1コーナーでヨニー・エルナンデス(プラマックレーシング)が転倒、3周目には5番手まで順位を上げていたジャック・ミラー(LCRホンダ)がオーバースピードでチームメイトのカル・クラッチローに接触し、双方が転倒してしまった。

 レース中盤、先頭を行くV・ロッシと2番手のM・マルケスが抜け出し、3番手争いが激化。18番グリッドからスタートしたダニロ・ペトルッチ(プラマックレーシング)、アンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)などが順位を上げ、J・ロレンソ、D・ペドロサと共に3番手争いを繰り広げた。

 後方からスタートしたD・ペトルッチがジャンプアップして上位争いに加わるという思わぬ番狂わせに沸くレース中盤、またしても予想外のアクシデントが発生。13周目に2番手を走行し、先頭のV・ロッシをあと少しのところまで追いつめていたM・マルケスが転倒しそのままレースを終えてしまったのだ。

 このM・マルケスの転倒によって先頭のV・ロッシは独走状態となり、また3番手を走行していたD・ペトルッチが2番手、A・ドビツィオーゾが3番手に浮上した。

 D・ペトルッチは悪天候をものともしないアグレッシブな走りで一時大きく開いていたV・ロッシとの差を詰めたものの、結局始終安定した走りを見せたV・ロッシが雨で大波乱の展開となったレースを制した。

 V・ロッシはシルバーストーンサーキットでの優勝は初めて。苦手意識のあるサーキットとも言われていたが、ずば抜けた集中力で難コンディションを味方につけた。また、V・ロッシの優勝は今季4度目。昨年の日本GPから継続している連続表彰台記録を16に伸ばしている。

 2位のD・ペトルッチはMotoGP自己最高位と初の表彰台を獲得。3位はA・ドビツィオーゾ、スタート直後先頭に立ったJ・ロレンソは4位、5位はD・ペドロサという結果になった。

 また、5番グリッドスタートでレース中盤まで上位に食い込んでいたP・エスパルガロ、14番グリッドスタートのステファン・ブラドル(アプリリアレーシング)は転倒リタイアを喫している。

 第11戦のチェコGPでJ・ロレンソと同ポイントで並んでいたV・ロッシだが、今回の優勝で25ポイント加算して236ポイント。チャンピオンシップ争いで頭一つ抜け出した。J・ロレンソは4位の13ポイントが加算されて224ポイント、12ポイント差の2位につけている。

 今回のイギリスGPでは天候の悪化がレースのカギとなった。冷静かつ慎重にレースをコントロールしたV・ロッシはやはりさすがだが、守りに入ることなく攻め抜いたD・ペトルッチの健闘は特に光り、イタリア人ライダーが表彰台を独占する結果に結びつけた。

 次戦はイタリア人ライダーにとってはホームグランプリとなるサンマリノGP。ポイントリーダーV・ロッシの故郷の近くで行われるグランプリだけにその活躍は大いに期待される。今回のイギリスGPで若干差はついたものの、J・ロレンソとのチャンピオンシップ争いもまだ僅差。シーズン終盤に向けて目の離せない面白い展開になってきた。

 さらにD・ペトルッチという予想外の伏兵の出現、不調気味だったA・ドビツィオーゾの第5戦フランスGP以来の表彰台獲得なども今後の展開を読みにくく、かつ楽しみにしている。

 V・ロッシが故郷に錦を飾るのか、それともJ・ロレンソが意地を見せ巻き返すのか、いずれにしても次戦サンマリノGPはチャンピオンシップに大きく関わってくることは間違いない。今回のように思わぬ伏兵が現れる可能性にも期待しながら次戦を待ちたい。(編集担当:熊谷けい)