6月27日、MotoGP第8戦、オランダGP決勝が開催された。例年土曜日に決勝が行われるオランダGPの舞台なるのは、TTサーキット・アッセン。1949年のモーターサイクル世界選手権誕生以来、毎年レースを開催してきた伝統のサーキットである。
2006年に大改修が行われて以降、アッセン・TTは18のコーナーを持つテクニカルなサーキットとなっている。特にコース後半に抜きどころが多く、限界ギリギリのブレーキング競争が見物の一つ。さらに、ダッチウェザーと呼ばれる非常に気まぐれな天候がレースの展開を大きく左右する。ところが、今季のオランダGPは、晴れ渡った空の下、気温20℃、路面温度30℃のドライコンディションで決勝を迎えた。
決勝スタート。ホールショットを決めたのは予選でポールポジションを獲得したバレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)。それに続き2番手につけたのは3番グリッドからスタートしたマルク・マルケス(レプソルホンダ)だった。
8番グリッドスタートのホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)は抜群のスタートを決めてレース序盤に3番手まで浮上、予選で2番グリッドを獲得したアレイシ・エスパルガロ(スズキエクスター)はレース序盤で5番手まで順位を落とした。
レース序盤は混戦模様となったが、いち早く抜け出してレースを引っ張ったのがトップを行くV・ロッシとM・マルケスだった。3番手のJ・ロレンソも4番手以降の集団からは抜け出したものの、前を行く2台とは差をつけられて3番手を単独走行する形になった。
V・ロッシとM・マルケスは速いペースでレースを引っ張り、後続を引き離していく。V・ロッシの後ろにM・マルケスがぴったりとつける状態でレースは推移。レース中盤にV・ロッシがペースを上げ始めるも、2番手のM・マルケスも離れることなく追走。レース中盤はM・マルケスがV・ロッシのわずかな隙を伺う、息もつかせぬ接近戦となった。
さらに、4番手以降の順位争いも白熱。4番手から12番手までの順位が目まぐるしく入れ替わり、抜きつ抜かれつのデッドヒート、各所で熾烈なバトルが演じられた。
レースが大きく動いたのは残り7周、20周目。M・マルケスが前を行くV・ロッシをかわして先頭に立った。そのまま、V・ロッシを引き離しにかかったM・マルケスだが、V・ロッシも食い下がり熾烈なトップ争いは続行。24周目、残り3周で今度はV・ロッシがM・マルケスを抜き返して再びトップに立ち、これにはスタンドの観客も大いに沸いた。
また、後方5番手争いも激化し、レースは最後の最後まで目が離せない様相となった。
そんな接戦が繰り広げられるオランダGP、最大のドラマは最終ラップ、最後の最後に待ち受けていた。
最終ラップまでギリギリの接戦となったトップ争い、最終シケインでM・マルケスが強引に勝負に出たのだ。このチャージで軽く接触したV・ロッシとM・マルケスは双方がコースを外し、V・ロッシはグラベルを走行するもM・マルケスの猛攻を凌いだ。この今季一番の手に汗握る攻防を制したV・ロッシは6年ぶりとなるポールトゥウィン、今季3度目の優勝を手にした。
2位はM・マルケス、3位はスタート直後から安定した走りでポジションを守ったJ・ロレンソ、4位はアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)、最後の最後まで熾烈な争いとなった5番手争いを制したのはポル・エスパルガロ(モンスターヤマハテック3)だった。
2番手グリッド、からスタートしたA・エスパルガロは9位、4番グリッドスタートのダニ・ペドロサ(レプソルホンダ)はスタート直後に順位を大きく落としたのが響き8位という結果だった。
最後の最後に最大のバトルと波乱が待ち受けていた今回のオランダGP。V・ロッシは6年ぶりのポールトゥウィンでその強さを証明し、M・マルケスはそのV・ロッシをギリギリまで追い詰めて自身の底力を見せつけた。
今季いまいちパッとしなかったM・マルケスだが、ここにきてその速さを取り戻しつつある。だが、V・ロッシとJ・ロレンソのモビスターヤマハMotoGPも絶好調。予選ではスズキも速さを見せており、またドゥカティもA・イアンノーネが4位と健闘。今後の展開はまだまだ読めない。
次戦は超低速サーキット・ザクセンリンクが舞台のドイツGP。サマーブレイク前、今季前半戦の締めくくりとなる大事なレースだ。モビスターヤマハ勢が前半戦を圧倒するのか、それともホンダ・ドゥカティ・スズキら他のチームが後半戦に向け反撃の兆しを見せるか、目の離せないレースになりそうだ。(編集担当:熊谷けい)