14年の新設「合同会社」は1万9,879社  5年で約3倍に急増

2015年09月08日 07:23

 合同会社は2006年5月1日に施行された会社法により、新しく設けられた会社形態。アメリカのLLC(Limited Liability Company)がモデルになっている。設立手続きの簡素化、維持運営費用に優位性があり、決算公告の義務もない。かつ組織の自由度が高く、柔軟性を持たせた経営・運営をできることが特徴となっている。

 設立手続きの容易さや節税目的などから、個人企業が合同会社として法人化することも増えている。また、最近では社内の意思決定が迅速にできることもあり、外資系企業の日本法人、投資および発電関連の会社などで、合同会社は幅広く活用され、浸透しつつある。

 東京商工リサーチによると、2014年(1~12月)の1年間に新しく設立された法人は11万9,552社。このうち、合同会社は1万9,879社と、新設法人に占める割合は16.6%だった。2013年に比べて新設法人数は5,343社(36.8%)増加し、2010年と比べてここ5年で約3倍になっているという。

 詳しくみると、2014年の新設法人のうち、合同会社は1万9,879社で、前年より36.8%増と、増加率が法人格全体で最も高かった。特に、2013年以降は2年連続して35%を超えるなど著しい増加率をみせた。株式会社は8万7,205社と新設法人数が最も多かったが、前年に比べ5.0%増にとどまった。特定非営利活動法人(NPO法人)は非公益活動などを行う企業もありイメージが低下し、設立要件の厳しさや設立時の手続きも複雑のため、2年連続で前年を下回ったとみられると分析している。
 
 産業別では、全10産業で増加した。金融・保険業が前年比70.6%増と最も高く、次いで不動産業が同51.1%増、製造業が同49.1%増、サービス業他が同41.3%増と続く。東日本大震災前の2010年と新設法人数を比べると、円安の進行で起業環境の改善の大きかった製造業が約4.5倍(198→896社)と最も増加。卸売業が約3.7倍(217→804社)、不動産業が約3.3倍(789→2,660社)、建設業が約3.2倍(275→887社)と、それぞれ増加した。

 資本金別では、「1百万円未満」が1万1,249社(前年比34.5%増)と最も多く、「1百万円以上5百万円未満」が6,869社(同40.2%増)、「5百万円以上1千万円未満」が1,615社(同40.4%増)と続く。資本金1千万円未満が1万9,734社(前年1万4,415社)と、全体の99.2%(同99.1%)を占め、合同会社の新設法人の大きな特徴となっている。

 地区別では、全9地区で新設法人数が前年を上回った。増加率では、近畿が前年比53.9%増(1,736→2,671社)で最も高く、特に兵庫、滋賀で増加が目立つ。次いで、関東と四国が同42.1%増、北陸が同41.0%増、中国が同40.7%増、東北が同34.4%増、九州が同22.1%増、中部が同19.3%増、北海道が同10.2%増の順だった。

 最近では、APPLE KAPAN合同会社(TSR企業コード:295704705、東京都港区)や合同会社西友(TSR企業コード:290278139、東京都北区)など株式会社や有限会社から合同会社に組織変更する企業もあり、合同会社の知名度は高まりつつある。合同会社の利点である柔軟性のある経営が浸透すれば、合同会社の新設法人数は今後も増える可能性が高い、と東京商工リサーチでは分析している。(編集担当:慶尾六郎)