東京商工リサーチは、「2015年3月期単独決算ベース「銀行114行 預貸率」調査」を実施した。
それによると、2015年3月期決算の国内銀行114行の預貸率は6年連続で低下したという。預金と貸出金の差額である預貸ギャップは236兆円に拡大し、景気が上向きになったとはいえ、先行きの不透明さを懸念して手元資金を確保する慎重な企業がまだ多く、前向きな資金需要が乏しいことを反映した。
また、一時より貸出しを増やす銀行は多くなったが、中小企業向けに比べて、地方公共団体向け貸出の増加率が大きいなど、リスクを回避した貸出姿勢は変わっていない。今後は前向きな資金需要に応じることで預貸率の低下に歯止めがかかることが期待されるとしている。
銀行114行の2015年3月期単独決算ベースの預貸率は、67.74%(前年同期67.90%)と前年同期を下回った。3月期決算推移では、2009年3月期(75.75%)以降、6年連続で低下した。
銀行114行の総貸出金残高が、496兆7,320億3,100万円(前年同期比4.6%増)だったのに対し、総預金残高(譲渡性預金を含む)は733兆3,091億5,700万円(同4.8%増)で、預金総額が貸出金の伸びを上回った。これは、上場企業を中心とした好調な業績を背景に手元資金を厚くする企業が多いことに加えて、株価上昇による株式売却益や、賃上げなどの影響による個人預金の増加も要因にあるとしている。
そして、この結果、2015年3月期の「預貸ギャップ」(預金+譲渡性預金-貸出金)は、236兆5,771億2,600万円にのぼり、預金の貸出金に対する大幅超過は拡大を続けている。「預貸ギャップ」の推移は、2011年3月期が194兆6,804億4,100万円だったが、12年3月期に201兆7,380億5,400万円と200兆円を上回った。以降も年々拡大を続け、銀行資金が必ずしも貸出増加に回っていない実態を映し出したと分析している。
114行全体の預貸率は低下を続けているが、個別では前年同期より比率が上昇したのが70行(構成比61.4%、前年同期60行)と6割を占めた。比率が上昇したのは、西京銀行の8.06ポイント上昇(71.08→79.14%)を筆頭にして、新生銀行7.03ポイント上昇(68.38→75.41%)、岩手銀行6.71ポイント上昇(49.90→56.61%)など。個別では預貸率が前年同期よりアップした銀行が増えていることから、今後は預貸率の低下に歯止めがかかることが期待されるとした。
一方、前年同期より預貸率が低下したのは43行(構成比37.7%)、同率が1行だった。預貸率の低下が目立ったのは、みずほ信託銀行の前年同期比4.19ポイント低下(99.58→95.39%)を筆頭に、清水銀行3.65ポイント低下(74.98→71.33%)、東邦銀行3.54ポイント低下(51.49→47.95%)、静岡銀行3.35ポイント低下(83.42→80.07%)など。
銀行114行の預貸率は6年連続で低下したが、企業景況感の改善や政府が中小企業向け貸出を促していることなどを背景に、銀行貸出しは伸びている。しかし、まだ力強さに欠け、現状では全体の預貸率を上昇させるまでには至っていない。企業の設備投資は改善しつつあるが、「手元資金が潤沢で貸出し増につながるには、まだ時間がかかる」との声も聞かれる。預貸率の上昇には、貸出増加と合わせて、企業・個人ともに手元流動性を確保する動きを緩和させることも必要だとしている。
同社ではこのために、景気拡大を持続して、大企業に比べて内需依存度の高い中小企業が先行きに明るい展望を持てる経営環境づくりが求められると分析している。(編集担当:慶尾六郎)