参入相次ぐiPS 細胞ビジネス メディネットと東大がiPS細胞を用いた免疫細胞治療技術開発へ

2015年09月26日 19:49

 iPS細胞による再生治療のビジネス化が進んでいる。すでに、様々な企業や医療ベンチャーが参入しているが、今回はメディネット<2370>と東京大学が共同開発を発表した。

 メディネットと東京大学医科学研究所 幹細胞治療研究センター 幹細胞治療分野中内啓光教授と、iPS細胞を用いた免疫細胞治療(CTL)の新規治療技術の開発を行うと発表した。

 免疫細胞の一種である細胞傷害性T細胞(CTL)は、がんやウイルスなどの抗原を認識し、異常な細胞を攻撃するリンパ球の一つ。しかし、がんやウイルスとの長期戦により、CTL が老化・疲弊してしまうことで、その機能を発揮できない状態に陥ってしまうことが課題となっている。そのため、現在では、治療効果を向上させるために、CTL を患者様から一度外に取り出し、体外で増幅させて、再び患者様の体内に戻す治療法(CTL 療法)などが行われているという。

 中内啓光教授らの研究グループは、2013年に CTL細胞からiPS細胞を誘導し、再度CTLに戻すことで、若返らせた状態にするとともに、CTLを大量に得ることが出来る新しい技術開発に成功した。また、2015年には、この技術を利用して作製したヒトのCTLを用いて、がんのモデルマウスに投与したところ、マウスの体内で効果的に腫瘍を縮小させることが確認された。さらに、この治療で起こりうる副作用を抑えるために特定の薬剤を投与することにより、投与した細胞を効率的に消失させることも確認したことを発表している。

 そのため、同技術を用いた iPS細胞を用いたCTL療法は、高い安全性を担保しながら効果が期待できる全く新しい免疫細胞治療として期待が高まっている。今回の共同開発基本合意に基づき、新規開発されたiPS細胞を用いたCTL治療の開発を目指し、共同研究を進める。

 中内啓光教授この技術と同社のこれまでの臨床応用に係る技術・ノウハウを融合させること、及び当社が保有する商業生産規模のCPF(細胞培養加工施設)を利用することで、臨床応用までの道のりを加速させることを目指し、共同開発基本合意にいたった。

 今後、臨床用SOP構築・整備から臨床研究、商業化までのプロセス開発などを共同で検討を進めていく。共同研究開発を通じて、iPS細胞の特性を活かして若返らせて再生されたCTLを用いるという、これまでとは全く異なった免疫細胞治療の開発につながると期待しているとしている。(編集担当:慶尾六郎)