日立と京大が「健常人iPS細胞パネル」を構築 実用化へ向け健常人ドナー確保へ

2015年09月11日 07:55

 iPS細胞の実用化がまた大きく前進する。日立製作所<6501>と国立大学法人京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は、健常人iPS細胞パネルの構築に向けた協力をすることで合意したと発表した。

 CiRAでは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の再生医療実現拠点ネットワークプログラム「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究」などにおいて、さまざまな病気の患者の細胞からiPS細胞(疾患特異的iPS細胞)を樹立し、公的な細胞バンクに寄託することにより、多くの研究者や企業が使用できる環境を整備するとともに、これらの病気の発症メカニズムの解明や治療薬の開発を進めている。

 研究を進める上で、疾患を持つ方と持たない方について、年齢や性別など属性が近い方のiPS細胞同士を比較検討することが必要である。疾患特異的iPS細胞やそれに付随する診療情報で構成された「疾患特異的iPS細胞パネル」に加えて、これらの疾患を持たない方の細胞から樹立したiPS細胞と健康に関するデータで構成された「健常人iPS細胞パネル」の整備も不可欠だ。

 また、健常人iPS細胞パネルには、細胞提供者が将来もこれらの疾患を持たないことを確認する必要があるため、健康に関するデータを長期間にわたって入手できることが特に重要となる。

 疾患特異的iPS細胞パネルは、CiRAが特定の疾患を持つ患者さんから検体や診療情報の提供を受けて構築しているが、今回、日立が運営する日立健康管理センタは、健康診断に訪れる健常人からドナーとなるボランティアを募り、CiRAにおける日立の健常人iPS細胞パネルの構築に協力する。

 具体的には、日立健康管理センタにおいて、同意したドナーから血液を採取し、匿名化した健診データとともに、CiRAに提供。その後、CiRAが血液細胞からiPS細胞を樹立し、これらのiPS細胞および健診データからなる「日立iPS細胞パネル」を構築する。

 健常人iPS細胞パネルの構築には、多数の健常人ドナーを確保するとともに健診データと関連付ける必要がある。日立健康管理センタでは、長期にわたり継続的に健診データを収集・活用し、医療の発展に貢献してきた経験を踏まえ、有用性の高い「日立iPS細胞パネル」の構築に貢献できると考えているとしている。なお、日立iPS細胞パネル構築に関する費用は、CiRAが負担するという。

 「日立iPS細胞パネル」構築の計画については、京都大学医の倫理委員会で7月27日に、続いて、日立製作所病院統括本部倫理委員会でも8月17日に承認された。これにより、9以降からドナーの募集を開始し、さまざまな年齢、性別の方からなる100名程度の「日立iPS細胞パネル」の構築を目指す。(編集担当:慶尾六郎)