【今週の展望】SQ週で18000円台に乗せても上値は抑えられる

2015年10月04日 20:32

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10月は日銀の金融政策決定会合が2回ある。突然の贈り物をくれた黒田総裁に、毎回、期待してしまうクセがつき、はや1年。「お預け」が続くと、すねて、ひねくれる?

 海外の経済指標は、5日のアメリカのISM非製造業景況感指数が最も重要。アメリカ経済は「生産指標は不振、消費指標は好調」という傾向が続いているが、生産の不振が続くといずれ雇用の悪化という形で消費にも悪影響を及ぼすようになる。税収の約7割が輸入関税と付加価値税(VAT/消費税)というモナコ公国のような例外を除けば、消費経済だけで成り立つ国はない。8日のG20の主要議題はやはり中国経済になるのだろうか。

 5日はユーロ圏の8月の小売売上高、アメリカの9月のISM非製造業景況感指数、労働市場情勢指数(LMCI)、6日はアメリカの8月の貿易収支、7日はアメリカの8月の消費者信用残高、9日はアメリカの9月の輸入物価指数、8月の卸売在庫、卸売売上高が、それぞれ発表される。

 5日にユーロ圏財務相会合が開かれる。6日にEU財務相理事会が開かれる。オーストラリアで政策金利が発表される。イングランド銀行(BOE)の金融政策委員会が開かれ、政策金利が発表される。8日にペルーの首都リマでG20財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。9月16、17日に開催され「9月利上げ」を見送ったFOMCの議事録が公表される。9~11日にペルーのリマでIMF・世界銀行年次総会が開かれる。10日は北朝鮮の労働党創建70周年。お祝いに花火だけでなくミサイルも打ち上げるかもしれない。

 アメリカ主要企業の決算は、6日にヤム・ブランズ、7日にモンサント、8日にアルコアが発表する予定。

 今週は、6~7日に日銀の金融政策決定会合がある。10月はもう一度、30日にも1日だけ開かれる。昨年10月31日、「黒田バズーカ第2弾」と呼ばれるサプライズ追加金融緩和が断行されたが、あれからもうすぐ1年になる。以来、マーケットは日銀会合が開かれるたびに3回目の追加緩和の「贈り物」を期待するようになり、「おねだり」する顔ぶれに国会議員まで加わっている。

 しかし、日銀は昔の映画に出てくるような、移民して成功をおさめ、たまに一時帰国で里帰りしては故郷の人々に気前よく贈り物をばらまいて去ってゆく「アメリカの伯父さん」ではない。金融緩和で供給したマネーは、将来いつか「出口」を設定して回収しなければならない。だから慎重になるのは、インフレをコントロールし金融政策に責任を持つ中央銀行としては、当然のこと。それが政府によってゆがめられたのが、紙幣を野放図に印刷・発行した第一次大戦中のドイツの中央銀行ライヒスバンクであり、第二次大戦中の日本銀行だった。結果、敗戦後のハイパーインフレという形で国民が重荷を背負わされた。

 中央銀行の金融政策とは本来、戦争の遂行や政府の財源確保のためにあるのではない。ましてや株式市場など金融マーケットのためにあるのでもない。経済の安定、国民生活の安定のためにある。投資家や市場関係者が追加緩和の「お預け」にすねたり、ひねくれたりするのは、お門違いというものだ。

 アメリカのFRBは、その中央銀行の責任を果たそうとしている。リーマンショック以降にゼロ金利と量的緩和で大盤振る舞いしたマネーの回収を、利上げという形で開始しようとしている。すでに既定路線で、あとは利上げ時期が10月になるか12月になるか、それとも来年かという、時期の問題だけだ。

 その利上げ時期に影響を与えそうなアメリカの雇用統計の結果が2日に出た。非農業部門雇用者数は市場予測の20万人増に対して14.2万人増というネガティブサプライズ。7月、8月の数値も下方修正された。失業率は市場予測と同じ5.1%だったが、平均時給の伸びがゼロで、イエレンFRB議長が気にする「雇用の質」が悪い。ISM製造業景況感指数が50.2まで低下するなど生産指標の悪さが反映したようで、消費指標が良くても非製造業は非正規雇用が多く給与水準が低いので、雇用の質が製造業よりも見劣りする。

 これではアメリカの10月利上げはまずなく、12月も危うく、来年にずれ込むことも考えられる。最悪の場合、利上げできないままに景気が悪化して「QE4」に追い込まれ、FRBの出口戦略が挫折するかもしれない。発表直後のマーケットは、為替はドル売り円買いが進行し、ドル円は120円50銭台から119円割れまで円高急進。リスクオフで株が売られて債券が買われ、NYダウは一時258ドル安。大阪取引所の日経225先物夜間取引は17810円から17240円まで急落した。しかし結局、ドル円は120円付近まで戻し、NYダウ終値は200ドル高、CME先物清算値は17870円で、ネガティブサプライズを利上げ先送り観測がカバーしておつりがくるという真夜中の「いってこい劇場」だった。これなら週明け5日の東京市場には悲観的にならずにすみそうで、大きなマーケットイベントを悪くない結果で通過した。