2日の日経平均終値17725.13円のテクニカル・ポジションを確認しておくと、5日移動平均の17482円は下にあるが、25日移動平均は18054円で上にある。ボリンジャーバンドは25日線-1σの17568円と+1σの18540円の間のニュートラル・ゾーンの下方寄りにある。-2σは17082円。200日移動平均は+2σの19027円よりも上の19108円、75日移動平均は+3σの19513円よりも上の19566円で、かすんで見えるような上空にある。19000円台は8月31日以来1ヵ月以上、取り戻せておらず、現実から遊離しすぎて今週は値動きにほとんど影響を与えないだろう。
それは日足一目均衡表も同じ。前週、「ねじれ」を起こしながら落ちていったが、2日時点で19277~19350円。今週は上限が19333円で固定され、下限は19261円から19155円へ下がっていく。雲の厚さは今週は72~178円程度で薄いが、来週からは次第に厚くなる。突破するなら今週までがチャンスだが、残念ながら2日終値から雲の下限(19277円)まで1552円も開いている。
むしろ重要なのはボリンジャーバンドの25日線-2σの17082円だろう。前週は6日に17000円を割り込んでザラ場安値は16901円、終値は16930円だったが、それは第一中央汽船<9132>の民事再生法申請という特別な出来事で中国経済、世界経済への不安が増幅されたため。それから週末まで800円近くリカバリーできている。SQ週の「鬼門」の火曜、水曜にもし荒れるとするなら、下値のメドはこの17082円付近とみる。
オシレーター系指標を見ておくと、2日終値時点で「売られすぎ」はRCI(順位相関指数)だけで、-66.4で売られすぎの目安の-50を下回っていた。それ以外は25日移動平均乖離率は-1.9%、RSI(相対力指数)は37.5、騰落レシオは101.4、サイコロジカルラインは7勝5敗で58.3%、ストキャスティクス(9日・Fast/%D)は45.3、ボリュームレシオは48.0だった。全般的に低めではあるが強い反発力を期待できる数値ではない。
反発のエネルギーという点では、需給のデータも確認しておく必要があるだろう。2日に東証が発表した9月第4週(24、25日)の投資部門別株式売買動向では、外国人投資家は759億円の売り越し7週連続、個人投資家は1585億円の買い越し2週連続、信託銀行は164億円の買い越し5週連続だった。外国人の売り圧力が弱まり、9月25日の裁定買い残は2兆707億円で18日よりも2815億円減少している。8月から9月にかけての荒れた時期に比べると需給動向は落ち着きをみせている。史上最高水準が続いたカラ売り比率も9月29日の43.4%をピークに30日は39.2%、10月1日は37.8%、2日は38.3%と「平熱」に戻りつつある。
それでもSQ週なので、今週もボラティリティが大きい状況はなおも続くだろう。値動きの下限は17082円付近だとしても、上のほうはどこまで上昇できるだろうか?
上海市場が7日まで休場で「鬼の居ぬ間に洗濯」ができ、25日移動平均の18054円を上回る局面はあるとしても、さらにその上までぐいと押し上げてくれるエネルギーが不足している。内閣改造は7日で、その前は人事が最大の焦点で、その後も各省庁で引き継ぎがあるので今週は政策に期待しにくい。経済指標も8日の景気ウォッチャー調査は足を引っ張る数字が出そうだ。小売大手の企業決算は業績観測記事で相当程度、織り込み済み。TPP交渉はどうなるかわからない。そんな状況なので、ボリンジャーバンドの25日線+1σの18540円は上値メドとしては高すぎ、9月のメジャーSQ値18119円あたりが適当だろうか。もし日本人のノーベル賞受賞者が出たら、マーケットには景気づけになってはね上がるかもしれないが……。
ということで、今回の日銀会合は金融政策現状維持か、せいぜいETF買い入れ枠の手直しなど「プチ緩和」程度になることを前提に、今週の日経平均終値の変動レンジは17100~18120円とみる。
8月下旬、「2万円台ワールド」から「17000~18000円台ワールド」にプチ・パラダイムシフトしてから1ヵ月以上が経過し、最初の頃はトレンド系もオシレーター系も居心地が悪かったテクニカル指標も、だんだんこなれてきた。まるで「住めば都」のようになり、「こんなところにいてはいけない」という気持ちが薄れてくる頃だろうか。
だが、「2万円台ワールド」にいた頃には、こんな水準に落ちるのは、転落してみじめにさまよう「ラビリンス(迷宮)」のイメージだったはず。それが「日常化」してしまったら、今の境遇がみじめだとも、早く脱出して上を目指して旅に出るべきだとも思わなくなってしまう。本当に怖いのは、そうなってしまうことなのだ。「麦畑の中の扉の発狂/空気のラビリンス/そこには一枚のカードもない/そこには一つのコップもない/慾望の楽器のように/ひとすじの奇妙な線で貫かれていた」(瀧口修造『妖精の距離』)(編集担当:寺尾淳)