先日、安倍晋三首相の任期満了に伴う自民党総裁選が行われ、安倍首相以外に立候補の届け出がないことから、首相の再選が確定した。その際、安倍首相はアベノミクスにおける新たな施策、いわゆる「新・三本の矢」を発表し、その一本目の矢として「希望を生み出す強い経済」の実現を掲げている。これまでのアベノミクスの効果により、日本経済は緩やかな回復傾向にあるとされているが、その傾向をこの一本目の矢を放つことにより強化したい考えだ。しかし、その思惑に冷や水をかけるような調査結果が、1日に日本銀行によって発表された。
1日、日本銀行は9月の全国企業短期経済観測調査(短観)を発表。それによれば、代表的な指標である大企業の製造業の業況判断指数(DI)は前回調査の6月から3ポイント悪化してプラス12ポイントであったことがわかった。悪化するのは3期ぶりのこととなる。中国や新興国の経済減速が輸出関連産業の景況感に影響をもたらしたことや、国内の個人消費の伸び悩みなどが反映したものとみられる。
日本銀行の短観は3ヶ月ごとに実施され、1万1000社を対象に景況感を調査している。今回は8月下旬から9月30日までの期間に調査が行われた。それによれば、景気が「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を引いた値は、代表的な指標である大企業の製造業でプラス12ポイントであり、前回よりも3ポイント悪化した。
その一方で、大企業の非製造業の景況感は、訪日外国人旅行者の増加の影響により、前回よりも2ポイント改善してプラス25ポイントとなった。バブル経済直後の1991年11月以来、約24年ぶりの高水準となった。2015年1~8月の訪日外国人旅行者の数は前年よりも5割増え、小売り、宿泊・飲食サービスの景況感を底上げした。そのほか、建設、不動産などの内需関連の景況感も改善した。
「新・三本の矢」の一本目の矢に冷や水を浴びせかけるような今回の日本銀行の短観ではあったが、非製造業の景況感も含めて見方を変えてみると、日本経済の底堅さを伺い知ることもできる。今回の結果で一喜一憂する必要はなさそうだが、製造業の3期ぶりの悪化は日本経済への警告として受け止めておいても、「石橋を叩きすぎる」結果にはならないだろう。(編集担当:滝川幸平)