業績悪化にともない、介護事業を売却する方針を固めていた外食大手のワタミ<7522>だが、2日、ワタミは同事業を損保ジャパン日本興亜ホールディングス<8630>(HD)に売却するとの発表を行った。売却額は210億円で、12月1日に買収を完了し、パートを含む約7000人の従業員も引き継ぐ。ワタミは「ブラック企業」との批判を受けたことによるイメージ悪化の影響や、国内外の外食事業の不振などにより、2015年3月期末の時点での有利子負債が300億円にまで達していた。今回の介護事業の売却により経営状態と財務体質を改善させたい考えだが、本業である外食事業が回復しないことには、それらの実現は難しいというのが現状だ。
損保ジャパン日本興亜ホールディングスに売却されるのは、子会社の「ワタミの介護」で、同社は有料老人ホームの「レストヴィラ」などを埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫、広島の8都府県に約110施設を運営している。入居者は約6400人で、売上高は業界6位となっている。損保ジャパン日本興亜ホールディングスはこれまで、介護中堅のシダー<2435>に34%、大手メッセージ<2400>に3.5%出資し、派遣した人材を通じノウハウを得てきていたが、今回、ワタミから介護事業を買い取ることで、自社で介護施設運営を開始させ、少子高齢化により需要拡大が見込まれる同事業を強化したい考えだ。
ワタミは14年3月期、15年3月期と2期連続で最終赤字。15年4~6月期連結決算では「黒字転換は必達」とし臨んだものの、15億円の最終赤字という結果に終わった。4月には運営する居酒屋「和民」などで10年ぶりとなる値下げや商品数の絞り込みなど、集客アップを目指して様々な施策を行ったが、8月の既存店売上高は前年同月比8.5%ダウン。施策の効果が現れたとは言い難い状況が続いた。
また外食事業だけでなく、有料老人ホームを運営していた「アールの介護」をグループ会社とし、2004年 に参入した介護事業についても、イメージ悪化の影響などにより入居率が低迷していた。そのほか高齢者食宅配事業についても、同業他社との競争が激化したことにより、15年4~6月期の営業利益は前年同期比50.7%ダウンと大幅なマイナスとなっていた。(編集担当:滝川幸平)