第3次安倍改造内閣での安倍晋三総理の談話。「日米同盟の絆は完全に復活し、地球儀を俯瞰する視点で進めてきた積極的な経済外交、平和外交は大きな実を結びつつあります。安全保障体制の基盤は一層強化されました」。
安倍総理は、この言葉の次に「日本は、ようやく『新しい朝』を迎えることができました」。「今こそ、新たな国づくりを始めなければなりません」と続けた。
新しい朝が何を意味するのか。安倍総理は、今後の3年間に『憲法改正』を成就させたいと真剣に考えるだろう。新しい朝、新たな国づくりの前言から、そのような印象を受ける。そして、そのためには、まず、『来年夏の参議院選挙での与党多数』を最大目標に戦略を練ることになる。
衆議院解散・総選挙はどうか。安保法案成立後も継続する「安保法制廃止運動」や、もともと世論調査で、先の国会での安保法案成立に反対の声が圧倒的多数だったにもかかわらず、成立を図ったことから、予想外に根強い反対の声に地方の自民系選挙関係者は解散した場合のリスクは大きいとみる向きもある。来夏の衆参同時選挙へシフトする可能性が強まっているとみるべきかもしれない。
ただ、GDP600兆円、介護離職ゼロ、希望出生率1.8を目指すと、打ち上げ花火を大きなものにしたので、個人所得は増える、個々の暮らしは良くなるなど、夢を売る政策を軸に勝負する、安倍総理得意の抜き打ち解散の可能性は完全にゼロになっているとは、やはりいいがたい。
政府・自民党は野党が強く求める「臨時国会」開会にも慎重姿勢だ。「何が起こるか分からない」。自民党幹部が危惧する声を報じるマスコミもある。
憲法改正手続きを経ずに、時の政権が「憲法解釈の変更」により、行使できないとしてきた集団的自衛権行使を容認し、それを根拠に安保法制を実現したので、『その是非について、国政選挙(総選挙、参院選挙)で審判を受けること』は、何より、安倍政権に正当性を持たせるうえで必要だ。
民主、維新、共産、社民、生活の野党5党が、明確に「憲法違反の部分を含む安保法制」と指摘するなか、この法案を成立させた自民、公明の与党が、総選挙で国民から支持されるのか。違憲訴訟が起こるかどうかは司法問題として、少なくとも、政治の世界において、国民が直接に意思表示できる場は総選挙と参院選挙のみだ。新年度予算に影響の少ないタイミングでの解散・総選挙で国民の意思を明確にする機会の提供が、その後の国会審議を実のあるものにするためにも望ましい。
安倍総理が語る「新たな国づくり」。行く先に、「憲法改正」標識が見えるところにまできている。それを是とするか、否とするか。安倍政権是非の選択にはこれも踏まえた選択意識が必要だろう。(編集担当:森高龍二)