10月18日、MotoGP第16戦オーストラリアGP決勝が行われた。シーズン終盤、チャンピオンシップの行方を大きく左右するレースの舞台となったのはフィリップアイランド・サーキット。メルボルンの南方の小島に作られたこのサーキットは、MotoGPが開催されるサーキットではアベレージスピードが最も速いハイスピードサーキットである。このサーキットは風が強いためにその影響を受けやすく、また接戦になることが多いのが特徴だ。
決勝当日は雲一つない青空。風はややあるものの例年に比べては弱く、安定した天候の下スタートを迎えた。
今回のレース、やはり注目されたのはポイントリーダーのバレンティーノ・ロッシと18ポイント差でV・ロッシを追いかけるホルヘ・ロレンソ(共にモビスターヤマハMotoGP)の2選手だ。予選の結果、J・ロレンソは3番グリッドから、V・ロッシは7番グリッドからスタートとなった。
気温15℃、路面温度42℃のドライコンディションでスタートした決勝、抜群のスタートでホールショットを決めたのは予選2番手のアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)だった。ポールポジションからスタートしたマルク・マルケス(レプソルホンダ)は3番手にやや後退、3番グリッドからスタートしたJ・ロレンソは2番手に浮上し、7番グリッドのV・ロッシもまずますのスタートで6番手に浮上した。
今回のレースは序盤から混戦模様だった。オープニングラップからA・イアンノーネとJ・ロレンソの激しい先頭争いが繰り広げられたが、2周目、トップを走るA・イアンノーネにコース上にいた鳥がぶつかるというアクシデントが発生。大事には至らなかったものの、今後の波乱を予感させる序盤となった。
レースはスタート直後から大混戦。A・イアンノーネ、J・ロレンソ、M・マルケスが先頭を巡って目まぐるしく順位を入れ替える接近戦を繰り広げ、予選でやや出遅れたV・ロッシも着実に順位を上げて先頭グループに参戦。4周目にはA・イアンノーネ、J・ロレンソ、M・マルケス、V・ロッシの4選手がトップ集団を形成し、激戦となった。
5周目からは先頭のJ・ロレンソが頭一つ抜ける形となり、2番争いが激化。A・イアンノーネ、M・マルケス、V・ロッシが接触をも恐れない熾烈なバトルを演じ、順位が目まぐるしく入れ替わった。
レース中盤の14周目には、2番手につけたM・マルケスが先頭のJ・ロレンソを急激に追い上げてその差を詰め、先頭集団は再び4台に。
19周目には先頭争いはM・マルケス、J・ロレンソ、A・イアンノーネ、V・ロッシの上位4台が急接近し、誰が先頭に立ってもおかしくない接戦となった。特にストレートスピードで圧倒するドゥカティのA・イアンノーネにコーナーで勝るヤマハのV・ロッシの二人は、序盤から抜きつ抜かれつの大バトルを繰り広げており、まさに手に汗握る展開となった。
レースは終盤に差し掛かっても接近戦は変わらなかったが、残り3周、M・マルケスとA・イアンノーネ、V・ロッシの2番手争いの隙にわずかにJ・ロレンソが抜け出した。これによってJ・ロレンソが有利になったかに思われたのだが、劇的な展開は最終ラップに待ち受けていた。
最終ラップ、2番手走行中のM・マルケスが急激にペースを上げ、J・ロレンソを猛追、コーナーでJ・ロレンソを抜き去り、劇的な大逆転で今季5勝目を勝ち取った。なお、M・マルケスの最終ラップはこのレースの最速タイム(ファステストラップ)を記録している。
2位はわずか0.249秒差でJ・ロレンソ。優勝争いと同じく最終ラップ最後の最後までもつれ込んだ3位争いを制したのはA・イアンノーネだった。ポイントリーダーのV・ロッシは惜しくも4位で表彰台を逃した。1位から4位までのギャップはわずかに1.085秒。このレースがいかに接近戦であったかわかる結果となった。
J・ロレンソは2位で20ポイント獲得して285ポイント、V・ロッシは4位で13ポイントを獲得し296ポイントとなった。ランキングに変化はないが、J・ロレンソが7ポイント差を詰め、ギャップはわずか11ポイントとなっている。
まだ11ポイントリードしているV・ロッシが有利なことには変わりはないが、その差は僅差。J・ロレンソが残り2戦で逆転する可能性も大いに残されている。
また、今回のオーストラリアGPではドゥカティのストレートスピードに大いに驚かされた。今季は既に終盤のため巻き返しは難しいが、来季への期待も高まっている。
MotoGPもいよいよ残りあと2戦。年間チャンピオンの座を手にするのはV・ロッシか、それともJ・ロレンソか。また、チャンピオンシップの行方にはM・マルケスやA・イアンノーネなど、他のライダーの結果も大いに影響してくる。そういった意味でもますます目が離せない展開になってきた。
次戦は10月25日、マレーシアGP。終盤の3連戦の締めくくりであり、今季のチャンピオンシップを占うレースとなるだけに絶対に見逃せないレースになる。舞台となるセパンサーキットは熱帯気候で天候も不安定になりがちな難しいサーキットなだけにレースの展開は全く予測不可能だ。今季の大一番、マレーシアGPが今から楽しみだ。(編集担当:熊谷けい)