矢野経済研究所では、国内の人材ビジネス市場の調査を実施した。調査期間は2015年7月~9月、調査対象は、オフィスワークを中心とした人材派遣事業者、ホワイトカラー職種の人材紹介事業者、再就職支援事業者、技術者派遣ビジネス事業者、営業・販売支援ビジネス事業者、求人情報サービス事業者、製造派遣・請負ビジネス事業者、医療人材サービス事業者、グローバル人材紹介事業者など。調査方法は同社専門研究員による直接面談、郵送によるヒアリング、ならびに文献調査を併用した。
それによると、2014年度の人材派遣業市場規模は前年度比 105.0%の3兆 7,701億円であった。同市場は好景気を背景に売り手市場、採用難、派遣労働者の時給単価の上昇が続いている。企業における正社員採用意欲も依然として旺盛で、派遣スタッフのなり手が減るとともに、人材獲得競争が人材派遣事業者間、及び企業と人材派遣事業者との間で激化し、派遣スタッフ不足を起因とした受注の取りこぼしが生じているとしている。
2010年以降の規制強化を背景としたアウトソーシング(業務請負)化および直接雇用化の流れが続いていることも、需要に比例した市場の拡大を妨げる要因となっているが、人材派遣需要の拡大が継続し、雇用の流動化も進展したことから、これまで続いていた市場縮小に歯止めがかかったという。
2015年度の同市場規模は前年度比 103.4%の3兆9,000億円と 14年度に続き増加と予測した。好景気の継続に加えて、企業の人材ニーズ、派遣稼動者数も順調に拡大を続けているが、勢いは14年度のほうがあったことなどを踏まえ、伸び幅は若干鈍化すると予測した。
当該市場においては、改正労働者派遣法が 2015年9月に施行され、専門26 業務と自由化業務の区分が撤廃され、自由化業務で最長3年となっていた派遣労働者の受け入れ期間制限が両業務で廃止された。これにより雇用の流動化が進むことが期待されているという。派遣先企業にとっては利便性が高まり、全体として人材派遣に対する需要が高まるという期待感もある。ただ、いずれにおいても、人材確保が引き続き業界最大のクリアすべき課題であるとしている。
14年度の人材紹介業市場規模は前年度比118.6%の1,850億円であった。14 年度も引き続き景気が回復傾向にあり、人材需要は活発に推移した。特に、IT エンジニアなどの技術者や、産業や企業のグローバル化を背景にしたグローバル人材などを中心に求人が引き続き活発な状況で、同市場も好調に推移した。また、採用難を背景にした紹介手数料率の上昇やハイスペックな人材の需要増により紹介手数料単価が上昇、採用手段としての人材紹介サービスの普及がさらに進み市場拡大をけん引したとしている。
2015年度の同市場規模は、人材需要が引き続き高水準を維持する見通しにあることから、前年度比110.3%の2,040億円と予測している。近年は、高度な専門性を有するハイスペックな人材に対する需要が高まる傾向にあり、人材紹介事業者は高収益が見込めるこうした人材の取り扱いを強化している。また、雇用維持型から労働移動型へ就業モデルのシフトが国主導で進められ、これまで動きのなかった 30 代~40 代のミドルシニア層の流動化機運が高まっていることもマーケットに追い風となっていると分析している。(編集担当:慶尾六郎)