密度の経済から見た、日本の未来

2015年10月29日 07:48

画・密度の経済から見た、日本の未来

国立社会保障・人口問題研究所の報告書によると2010年の日本の総人口は1億2,806万人であった。それが60年には8,674万人になると推計している。そこで、ある特定地域だけに高い密度で出店しリソースの共有化による経済効果を指す「密度の経済」から活性化の可能性を探る。

 国立社会保障・人口問題研究所の報告書によると2010年の日本の総人口は1億2,806万人であった。それが30年には1億1,662万人に、48年には9,913万人となり、60年には8,674万人になると推計している。人口が減り「限界集落」や「限界団地」が増えていくであろう地方に活性化の道はないのだろうか。そこで、ある特定地域だけに高い密度で出店しリソースの共有化による経済効果を指す「密度の経済」という知見から地域活性化の可能性を探る。

 内閣府経済社会総合研究所のレポートによると、一定の地域に人と企業を集積する「密度の経済」を実現することで地域の稼ぐ力が向上するとしている。それは、これまでのように規模が増大すれば費用が低下する「規模の経済」から脱却を意味し、事業が立地する場所の人口密度を高め生産性を向上させる「密度の経済」への転換を意味している。

 さらに社会関係資本についての言及もあり、人々の協調行動を活発にすることで社会の効率性を高めることのできるとし、信頼・互酬性の規範・ネットワークといった社会組織の特徴が豊かであれば地域コミュニティの改善や地域活性化にプラスの効果をもつと示された。

 さらに、人口規模が小さい地域であっても密度を高めることによって生産性を向上させることが可能であり、一方信頼や互酬性といった人間関係の絆の強さは、人口規模や人口密度が小さくても高めることができる。よって、密度の経済を地方創生に生かせるとする政府の考えが伺える。

 今後、人口減少による歳入減が予測される日本経済において、国はかつてのように地方へばらまき型の対応が必然的に取れなくなる。しかし、命にかかわる医療や公共交通機関などインフラの面を削ることは難しく、自ずと社会資本を集約する政策に転換せざるを得ない。

 そこで地方では特に人口を集約する必要が高まってくる。ただ人は、年を重ねれば重ねるほど今の土地から動きたくないとの心理が働くものだ。政府による政策だけでは、人の心まで動かせない。しかし豊かなコミュニティまで含め実現できたのなら、安部政権の掲げるまち・ひと・しごとの創世につながるであろう。(編集担当:久保田雄城)