MotoGP2015シーズン総括

2015年11月23日 21:02

2015総括

年間王者を争ったJ・ロレンソとV・ロッシ

 2015年11月8日、バレンシアGPの決勝レースは、ホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)の年間チャンピオン決定で幕を閉じたMotoGP2015年シーズンだが、シーズンを通してその話題の中心となったのは36歳の現役ライダーバレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)だった。

 開幕戦であるカタールGPで勝利を飾ったV・ロッシはその後も好調をキープし、シーズン序盤はマルク・マルケス(レプソルホンダ)、J・ロレンソといったライバル勢から頭一つ抜け出す形となった。36歳、現役最年長ライダーであり、生きる伝説とも言われるV・ロッシの好調ぶりに世界中のMotoGPファンは沸き立った。

 このV・ロッシに待ったをかけたのがチームメイトのJ・ロレンソだった。序盤こそあまり調子の乗らなかったJ・ロレンソだが、4戦目スペインGPから4連勝。シーズン中盤からはV・ロッシと年間チャンピオンを賭けた一騎打ちとなった。

 好調のモビスターヤマハMotoGPの二人に対して、いまいち波に乗れなかったのが昨季絶好調だったレプソルホンダ勢だ。2014年シーズンはM・マルケスが独走状態でチャンピオンをあっさりと決めたのだが、今季は大苦戦。特にシーズン前半戦は転倒リタイアによってノーポイントに終わることが多く、モビスターヤマハMotoGPの二人に大きく溝を開けられてしまった。

 またダニ・ペドロサ(レプソルホンダ)もシーズン前半戦はリタイアが多く、ポイントを得ることができなかった。

 V・ロッシのチャンピオン獲得に期待が高まる中、後半戦に入ったMotoGPだが、前半戦不調だったライダーたちが復調し始めた。M・マルケスが第9戦ドイツGP、第10戦インディアナポリスGPで連勝するなど完全に調子を取り戻し、上位陣に迫る。D・ペドロサも高位をキープする走りを見せてV・ロッシとJ・ロレンソは楽にレースを運ぶことができなくなった。

 V・ロッシとJ・ロレンソのポイントが徐々に詰まり、最後の最後まで目の離せないチャンピオンシップ争いになった今季のMotoGPだが、第17戦マレーシアGPで今季最大のアクシデントが発生。V・ロッシがM・マルケスに接触し、転倒させてしまったのだ。このアクシデントには世界中が騒然。V・ロッシに対しペナルティポイントが3ポイント加算され、V・ロッシは最終戦のバレンシアGPは最後尾スタートという裁定が下された。

 実は今季はV・ロッシとM・マルケスの間には確執があった。アルゼンチンGPでのM・マルケスの転倒や第8戦最終ラップのシケインでの接触など、今季のV・ロッシとM・マルケスのバトルは激しかった。もともとM・マルケスはアグレッシブな走りを見せるライダーではあったが、V・ロッシはM・マルケスに対して苛立ちを募らせており問題となったマレーシアGPでも手でサインを出すなど苛立った様子を見せていた。それが結果として、チャンピオン争いに水を差す展開となってしまったのだ。

 結局最終戦はJ・ロレンソがポールトゥウィン、V・ロッシは4位に終わり、J・ロレンソが最終戦で逆転し、5ポイントという僅差で年間チャンピオンの座を獲得した。

 今季印象的だったのは上位ライダーの勝ち数である。シーズン終盤までポイントリーダーであったV・ロッシは今季4勝、J・ロレンソは7勝、M・マルケスは5勝と、V・ロッシの勝利数は決して多いとは言えない。それでも最終戦までチャンピオンシップ争いがもつれ込んだのはV・ロッシが安定した走りで表彰台を獲得し続けたからだ。今季V・ロッシはリタイアなしという非常に安定した戦績を残しており、これが彼の強さの秘訣でもある。

 チーム別に見ると、昨季好調であったレプソルホンダに代わり、今季はモビスターヤマハMotoGPがレースを引っ張った。また、ここ数年不調だったドゥカティだが、今季は特にストレートで速さを見せ、上位に食い込んできている。今季から参戦しているスズキも初参戦にしてはまずまずの結果を見せており、両チームとも来季は期待できそうだ。

 今季もレプソルホンダとモビスターヤマハMotoGPの2強の争いとなったが、昨季とは全く違う展開となり、最後の最後までチャンピオン決定が持ち越されるというファンにとっては楽しみの多いシーズンであった。ただしV・ロッシ、M・マルケスの両選手およびそのファンにとっては少々後味の悪いシーズンとなってしまったことが残念だ。

 あと一歩のところでチャンピオンの座を逃したV・ロッシは来年は37歳になる。彼が来季どんな走りを見せるのか、そしてチャンピオンJ・ロレンソの2連覇はあるのか、さらにM・マルケスは逆襲の牙をむくのか――来季もこの3人から目が離せなくなることは間違いないだろう。

 また、これまでタイヤを供給していたブリヂストンは2015年シーズンで撤退。来季からタイヤはミシュランのワンメイクになるほか、全車のECUが共通のものに統一されることが決定している。こうした状況の変化やレギュレーションの変更がマシン開発やチームの勢力争いに大きな影響を及ぼすことは確実だ。

 この変化を味方につけ、来季飛躍するのはどのチーム、あるいはどのライダーなのか。来季は未知の可能性を多分に含むシーズンだけにファンの注目度も期待も高まりそうだ。(編集担当:熊谷けい)