IT専門調査会社 IDC Japanは、国内のICTインフラ運用管理サービス動向に関する調査結果を発表した。これによると、国内ICTサービス事業者(総合ITベンダー、SI(Systems Integration)事業者、通信事業者など)が、自社のICTインフラ運用管理サービスの競争力を強化するために、マルチクラウド対応や自動化に取り組んでいることが明らかになった。
パブリッククラウドIaaS(Infrastructure as a Service)(IaaS)への需要の高まりとともに、国内ICTサービス事業者のICTインフラ運用管理サービスには、自社以外の複数の主要IaaSをサポートするマルチクラウド対応が求められるようになっている。IDCが実施したユーザー調査でも、IaaSを導入する企業の半数近くが、その監視をIaaSの標準監視機能以外のツールで行うと回答している。調査では、多くの事業者がこのようなニーズに応えるために、自社の運用管理サービスでAWS(Amazon Web Services)やVMware vCloud Airを始めとする主要なIaaSを管理できるよう取り組んでいることが分かったという。
また、仮想化やマルチクラウド利用が進むことで、ICTインフラの運用管理は複雑化しつつある。一部のICTサービス事業者は、複雑化する運用管理を効率化するために、コグニティブ技術などを活用した自動化と、これを前提とする運用管理体制の変革にも取り組んでいる。こうした取り組みによって、顧客専任担当者の業務や障害切り分けといったフロントに近い業務を中心に、運用管理の自動化が進むと予想されるという。またバックエンドの専門エンジニアが複数の顧客に対応するなどエンジニアの効率活用も進むと考えられるとしている。
今後、このような運用管理の自動化への取り組みは、ICT業界全体、さらには産業を超えた広がりを見せるとIDCではみている。IDC Japan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの小野陽子氏は「ICTインフラ運用管理サービスでは、コグニティブ技術などの適用による運用品質の向上や効率化の取り組みが始まっている。これは従来の運用管理体制を変革していく大きな流れである。ICTインフラ運用管理サービスを提供する事業者はこうした流れに乗り遅れないよう新たな自動化技術の導入に取り組むべきである」と分析している。(編集担当:慶尾六郎)