財務省は産業スパイ行為の防止の強化のため、関税法の改正案を国会に提出する考えだ。この改正案では、企業が営業秘密としている技術等を利用して作製した品を輸出入の際、税関の判断で没収または廃棄ができるようになるという。
産業スパイ対策に、国が本気で取り組み始めたようだ。
2016年度税制改正に向け、財務省が関税法の改正案を次期通常国会に提出するという。この関税法の改正案とは、「産業スパイ対策」として、輸出入の現場(税関)で日本企業の営業秘密侵害品に該当するものを没収、場合によっては廃棄にできるというものだ。
営業秘密侵害品とは、まだ公開されていない企業の開発・技術情報などを利用して作られた製品のことを指す。営業秘密侵害品が外部に流出することで、開発・技術情報が同業他社などに渡り、利益を不正に取得・公開された上で市場においての競争の優位性が奪われてしまう。
こうした事態を水際で防止するため、財務省は今回の関税法改正案で営業秘密侵害品を「輸出入してはならない貨物」に追加し、これに該当すると認定されたものについては税関が没収・廃棄できるという実効性の高い手段を付加したのだ。
産業スパイ対策や日本企業の知的財産保護について、日本の政策は他国と比べて遅れていることは否めない。この現実もあり、各面から法改正が進んできたが、法整備の強化は依然として必要な状況だ。
企業情報を不正に取得する産業スパイ対策は主に不正競争防止法で規定されており、今年7月に情報流出対策の強化のため、改正不正競争防止法が成立したばかりだ。
この改正で罰金刑の額の引き上げや非親告罪化、立証責任の転換などの変更点が盛り込まれたが、実際に情報流出の間際に直面する税関では営業秘密侵害品を発見しても、通報して警察と検察に後を任せるしかない。財務省としてはこうした弱点を今回の関税法改正で打開したい考えだ。
日本では昨今、企業の営業または開発・技術情報の流出事件が目立っている。東芝<6502>のNAND型フラッシュメモリーの製造技術が韓国の半導体メーカー、SKハイニックスへ不正に流れた事件や、日本の工作機械大手ヤマザキザックの中国人社員による機械図面等の複製事件などがその例だ。
ものづくり、技術は日本の財産そのものである。当然、そこには経済的価値も付随する。つまり、今後はものづくりへの情熱だけでは最終的に企業の利益にはならないことになる。そこにいつ気付くか。そして企業がどのような対策を講じるか。技術を守るという企業の強い意志が求められる。(編集担当:久保田雄城)