14年の全国企業の財務は小規模企業が5年ぶりに債務超過解消へ

2015年12月10日 08:26

 2014年度の決算は、一部上場企業を中心に過去最高益をあげた企業が相次いだ。加えて、昨年に引き続き公共工事の増加が追い風となった建設業やインバウンドの恩恵を受けた企業などは業績の回復傾向を見せているという。

 一方で、中国経済の低迷や円安が進むなか人件費・原料高などのコスト増や、中国特有のリスクの影響を受ける企業が増え始めるなど、今後は会社の規模や業種によって業績の明暗が分かれていくことが考えられる。

 そこで、帝国データバンクでは、リーマン・ショック前の2007年度(2007年4月~08年3月期)から14年度(14年4月~15年3月期)までの8期間の財務分析を実施。収益性、安全性の2点から調査・分析した。

 それによると、企業の安全性を測る指標のひとつである「自己資本比率」を見ると、全産業平均で 22.89%となり、前年度比1.74 ポイント増加したという。また、規模別では全てにおいて改善、なかでも総資本「1億円未満」は最も改善幅が大きく(前年度比4.16ポイント増)、2009年度以来5年ぶりに資産超過に転じた。

 業種別では、「建設」、「製造」、「卸売」、「運輸・通信」の4業種が前年度を上回った。特に「建設」は、アベノミクスの財政出動による公共工事の増加で前年度比3.22ポイント増となり、最大の増加幅となった。しかし、リーマン・ショック前(2007年度)と比較すると4.96ポイントの開きがあり、未だにリーマン・ショック前の水準まで回復していない。また、「運輸・通信」は原油安によるコスト減がプラス材料となり、前年度比1.41ポイント上昇した。

 一方、「小売」は消費増税の反動減が長引いたことを受けて、前年度比0.24ポイント減とわずかに減少した。さらに、総資本「1億円未満」を見ると「製造」、「小売」の2業種が債務超過だった。

 また、企業の収益性を測る「売上高経常利益率」を見ると、全産業平均で2.60%となり、前年度比0.62ポイント増加した。全業種で前年度を上回り、リーマン・ショック以降最高値を更新。特に「建設」は前年度比1.04ポイント増と大幅に増加。大手ゼネコンを中心に堅調な公共工事と首都圏における住宅・商業施設の建設など民間需要が好調で、収益を重視した受注が可能となったことがあげられるとしている。

 他方、「製造」は円安による輸入原材料の高騰というマイナス要因はあったものの、コスト軽減などで前年度比0.56ポイント増とわずかに上回った。総資本「1億円未満」の小規模企業を見ると、2007年度以降で初めて全産業がプラスになるなど経営環境が上向いている様子がうかがえるとした。

 今回の調査・分析の対象となる2014年度は、消費増税に対する反動減が長引いた一方で、日銀による大胆な金融緩和で急速な円安を招き、製造業を中心とした輸出企業はその恩恵を受け収益を改善した企業が目立った。しかし、近時は中国経済の減速による企業の設備投資の慎重化や、テロによる海外渡航者減少のおそれなど不安材料が残る。米国の利上げが年内になる可能性が高まり、さらなる円安が予想され、原材料を輸入に頼る企業は収益面への影響が危惧される。中小企業の財務体質は改善するも景況感は依然足踏み状態と言え、これらがどのように企業経営に影響を及ぼすのか注視していく必要があると分析している。(編集担当:慶尾六郎)