電力だけではないガス小売りも完全自由化へ 楽天がガス事業に進出

2015年12月21日 07:32

 楽天<4755>は、クレアールエナジーが第三者割当増資により発行する株式を引き受けることに合意した。

 クレアールはクレックスが小売電気事業を行う目的で2015年10月に設立した会社。今回の増資に伴い、クレアールへの出資比率は、クレックス65%、楽天35%となる。

 楽天とクレックスは7月、家庭および法人事業者に対して、新サービスを共同で開発するため、約1万世帯のモニター募集を通じて顧客ニーズなどを調査してきた。その結果、簡易HEMSから得られるエネルギーデータと顧客のマイページとの連携による有効性、LPガス事業者の強力な販売チャネルと「楽天スーパーポイント」の組み合わせによるサービスの優位性等を確認し、両社の強みをより生かすため、第三者割当増資の引き受けを決定した。

 今後、クレアールは2017年都市ガスの小売全面自由化に鑑み、その前段として2016年4月以降に小売電気事業を行うための手続きを進め、クレックスの既存および新規のLPガス顧客に対して電力、ガス、その他の様々なコンテンツを組み合わせたサービスを提供していく。

 また、電力およびガスの小売自由化に伴い、様々な業界から事業者の参入が予想されており、今後クレアールが得たノウハウなどを活かしたサービスプラットフォームを新規参入事業者などへ展開することで、取次等を含めた営業・契約モデルの推進や、FIT電気およびゼロエミッション電源(水力、再生可能エネルギー(FIT電気を除く))の販売モデルの開発に取り組んでいく方針だ。
 
 一方、楽天は、B2B2C型のインターネット・ショッピングモール「楽天市場」を始めとする多様なサービスをワンストップで提供する「楽天経済圏」のさらなる拡大のために金融、デジタルコンテンツ事業への取り組みを強化している。

 エネルギー事業領域では、主に需要家側(デマンドサイド)に特化し、2014年にエネルギー需要開発有限責任事業組合を設立、2015年には電気使用量のデータプラットフォーム提供を見据えた、クレックスとの電力、LPガス、楽天スーパーポイントを組み合わせたサービスの共同開発における業務提携、また再生可能エネルギー電源開発推進を通じて、エネルギーの地産地消拡大のため低圧電力を使用している「楽天市場」の出店事業者や「楽天トラベル」に加盟する宿泊施設などに対する電力小売における業務提携を発表した。

 今後は、国内におけるガス需要家の44%を占め、2万社以上の事業者が存在する、完全自由市場のLPガス業界に注力したサービスプラットフォームを2017年の都市ガス小売事業全面自由化後のエネルギーインフラ業界の構造変化を視野に入れて積極的に検討していく。(編集担当:慶尾六郎)