省燃費を目指したガソリンエンジンのダウンサイズターボ化が止まらない

2016年01月01日 17:24

Engine_Forecast

レクサスIS、同NXからクラウンに移植する8AR-FTS型と呼ぶ2リッター直列4気筒直噴ターボエンジン。最高出力は245ps(175kW)/4000-5800rpm、最大トルクは35.7kg.m(350Nm)/1650-4000rpm

 2015年、ガソリンエンジンのターボ(Turbo/過給器)化は、完全に世界の自動車のパワーユニットとしてトレンドになった。独フォルクスワーゲン(VW)社から始まったダウンサイズターボ化は、2015年に主流になった。一般ユーザーにも、ダウンサイズターボ装着が走りの性能だけでなく、燃費にも効くという概念が確実に浸透してきたようなのだ。

 2009年、VWが主力のゴルフⅥでダウンサイズ・コンセプト発表。それまで2リッターエンジンを主軸に、3.2リッターV6エンジンをも搭載してきた同車が、主力を新開発TSI型1.4リッター・ターボエンジンに換装して話題になった。小さく軽いエンジンをノーズに収めた効果は歴然としており、クルマの鼻先が軽くなった効果は抜群で、圧倒的な回頭性の良さをゴルフにもたらした。この軽快なハンドリングが世界で評価され、その後世界のクルマの心臓が“ダウンサイズターボ化”へと進む。

 省燃費と運動性能を両立するうえでターボは重要な技術だ。このまま技術開発を突き詰めると、ディーゼルエンジンのようにすべてのガソリンエンジンがターボ化される可能性もある。

 いち早く国産車で過給器によるエンジンのダウンサイズに取り組んだのは日産のコンパクトカー「ノート」だ。2012年にターボではなく、同様の効果が得られるスーパーチャージャー(SC)で排気量ダウンに取り組んだ。日産ノートは、さらに4気筒から3気筒へエンジン型式でもサイズ縮小に挑んだ。搭載するパワーユニットは、ノートのために新開発したエンジンで、1.2リッター直列3気筒DOHC・SCで、最高出力98ps/5600rpm、最大トルク14.5kg.m/4400rpm。トランスミッションにエクストロニックCVT(無段階変速機)を組み合わせ、低燃費と気持ちの良い加速性能を両立した。アイドリングストップなどの省エネ対策機構を組み合わせJC08モード燃費25.2km/リッター(S DIG-Sグレード)を達成した。

 トヨタ自動車も2015年4月に発売した新型小型車「オーリス」でダウンサイズしたターボエンジンを搭載した。しかも、かなり冒険と思えるグレード&価格設定で臨んだ。排気量が最も小さい1.2リッターターボエンジン搭載車の価格が最も高い設定なのである。

 トヨタは、その後もダウンサイジングを推し進める。この秋には高級セダンのクラウンに、2.5リッターV6エンジンと換装する恰好で、2リッター4気筒直噴ターボを載せた。最高出力は245ps(175kW)/4000-5800rpm、最大トルクは35.7kg.m(350Nm)/1650-4000rpmである。これによってアスリート系で2.5リッターNAエンジン車が廃止となった。また、同エンジンはレクサスGSにも搭載した。

 ホンダは同社の5ナンバーミニバンのベストセラー「ステップワゴン」をフルモデルチェンジし、2015年4月に発売した。先代同様3列シートのミニバンである。大人数で乗っても加速性能や燃費を損なわないように、排気量1.5リッター直噴ターボエンジンをホンダ車として初めて搭載した。この新エンジンは、街乗りなどの常用域で2.4リッター自然吸気エンジン並みのトルクと、JC08モードで17.0km/リッターの低燃費を実現する。そのアウトプットは最高出力150ps(110kW)/5500rpm、最大トルク20.7kg.m(203Nm)/1600~5000rpmだ。ほぼ全域で最大トルクが得られる素晴らしい特性のエンジンだ。

 この新型「ステップワゴン」は、ダウンサイジングターボ車だけをラインアップ。あえて排気量の大きな自然吸気エンジンのモデルは用意していない。今後とも同ステップワゴンには、自然吸気ガソリンエンジン車の追加は無いと言う。が、ハイブリッド車の追加はあるかも知れない。

 これまでターボに消極的だったマツダも、この11月に、次世代スカイアクティブ戦略の一環として2.5リッターターボを、次期ミッドサイズSUVの「CX-9」に搭載すると発表した。また、同社はディーゼルエンジンで培った稀薄燃焼技術をガソリンエンジンに応用するガソリンの「リーンバーン過給」に注目している。

 世界の自動車用パワーユニットの2015年のトレンドは、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド(PHV)を含む電気自動車(EV)、クリーンディーゼル、燃料電池(FCV)、そしてこのダウンサイズターボと百花繚乱となったといえる。(編集担当:吉田恒)