【2016年の展望】JAL再建最後の年、ANAはどこまで差をつけられる?

2016年01月01日 15:26

画・【2016年の展望】JAL再建最後の年、ANAはどこまで差をつけられる?

JALには2017年3月まで「縛り」がついている。しかしANAとの差は思ったほど広がっていない。訪日客の反動減、北海道新幹線などの外部要因を味方につけるのはどちらか。新星スカイマークはANAにとってどういう存在となるか。注目ポイントはたくさんある

 2014年に座席キロ数での順位が入れ替わった航空業界最大手のANA(全日本空輸)〈9202〉とJAL(日本航空)〈9201〉。ANAは15年9月中間決算で売上高や営業利益が過去最高を記録。JALも4-9月期連結決算で、営業利益が前年同期比29.2%増の1199億円と大幅増益となり、両社とも好調を維持した年となった。背景には景気の回復、訪日外国人の急増、原油安などの要因があったとみられる。

 ANAの15年度の業績見通しは、売上高1兆7000億円(前期から989億円増)、営業利益850億円(同190億円増)、経常利益550億円(同120億円増)、純利益が350億円(同161億円増)と、当初の業績見通しを据え置いている。中国の景気減速の影響で、中国路線の座席利用率を保てるか不透明なためとしている。

 一方、そのような状勢でもJALは通期業績見通しを上方修正した。燃料コストの減少や国際線の伸びが上回るとの見込みからだ。売上高は前回予想より190億円増の1兆3470億円、営業利益が320億円増の2040億円、経常利益が330億円増の2020億円、純利益が280億円増の1720億円となる見込み。通期見通しも従来の減益予想から前年同期比15.4%増の1720億円に修正した。

 次に近いところで、2社の年末年始期間(12月25日~2016年1月3日)の予約状況を見てみよう。こちらはともに国際線は前年比増となったが、国内線で明暗が分かれた。JALは前年をわずかに上回り、ANAは微減となった。

 ANAは国際線で、提供座席数が前年比13.1%増の31万7276席、予約数が同8.4%増の25万475人、予約率が同3.4ポイント減の78.9%だった。国内線は前年比0.2%減の194万7389席を提供する予定で、予約数は同0.8%減の129万1843人。予約率は同0.4ポイント減の66.3%と伸び悩んだ。

 JALの国際線は、提供座席数が前年比2.3%増の31万2308席とANAとほぼ同数。予約数は同2.7%増の26万8464人と好調に推移、予約率も前年を0.3ポイント上回る86.0%と高い数字を残し、予約数、予約率ともANAを上回った。国内線はグループ (JAL、JEX、J-AIR、JTA、RAC、JAC)全体で提供座席数が同3.3%減の131万1188席で、予約数は同2.0%増の91万6016人。予約率は同3.6ポイント増の69.9%と、数としては少ないものの予約率は堅調だった。関西(77.5%)、沖縄(77.0%)が、良い数字を残している。

 15年の実績や予測を見ても、単価の高い国際線の展開が両社にとって重要なポイントになることは明らかで、中国経済の動向や欧米の状勢が気になるところだ。しかし、国内でも16年3月の北海道新幹線開業という気になる予定がある。東京と新函館北斗を結ぶ「はやぶさ」が1日に10往復運行され、東京~新函館北斗間の所要時間は最速で4時間2分、運賃は2万2690円だ。なお空路の羽田-函館便はANA・JALとも3万5490円で所要時間は1時間20分。北陸と違い「日帰り」需要が大量に流出するとは考えにくいが、共同運行を含めるとANAが5便、JALが3便就航している羽田-函館便に少なからず影響を及ぼしそうだ。

 もうひとつ注目するポイントは、ANAが資本金の16.5%を出資している新星スカイマークをどう展開するかだ。同様に傘下にスターフライヤー、ソラシドエア(旧スカイネットアジア航空)、エア・ドゥを持っているANAが、スカイマークが長年守ってきた「独自性」をどこまで引き継ぐのか。動向に注目したい。

 債権放棄、減便、機材の廃止、給与水準切り下げ、整理解雇…。公的資金の注入と会社更生法の適用で行っているJAL再生は順調に進んでいる。経営は16年度末まで国交省の監視下にあるため、新規投資や路線開設などが制限されているが、4-6月の羽田-南紀白浜便の乗客が過去最高を記録するなど、端々で地力を見せている。JALに制限がついている隙に差をつけるべくANAは国際線の新規開設など事業拡大を試みたが、あまり差がつかなかったのが現状だ。JAL再建最後の年の16年、ANAがもくろみ通り最大手の地位を確立するのは、容易ではない。(編集担当:久保田雄城)