2015年の電子部品業界、スマホ向けがけん引

2015年12月30日 19:39

 2015年の電子部品業界の中心にあったのは、やはりスマートフォン(多機能携帯電話)向けだった。9月に発売された米アップルの「iPhone6s/6s Plus」が好調な売れ行きをみせたことや、高速通信サービス「LTE」の普及率が高まったことにより、1端末あたりの部品数が増えやことなどが、業界全体をけん引することとなった。

 こうした状況を裏付けるように、業界大手の村田製作所<6981>は、電子機器の誤作動の原因となる電磁波によるノイズ対策部品を増産するとしている。ノイズ対策部品は電磁波が出ないようにしたり、干渉や影響を受けないようにしたりするための部品で、代表的な製品であるEMI除去フィルターはスマートフォン1台あたり約25個、タブレット端末には1台あたり約60個が搭載されている。村田製作所はスマートフォンなどの高機能化、薄型などにともない高まる需要に対応し供給の安定化をはかるために、13億5000万円を投じて福井県の工場に増産スペースを確保、さらに16年度には追加投資し生産設備を導入するとしている。

 ただし、こうしたスマートフォン頼りの体質に懸念の声がないわけではない。京セラ<6971>が10月29日に発表した16年3月期 第2四半期は、売上高が前年同期比1.2%増の7225億円、営業利益が同13.1%増の619億円であったが、15年度の売上高は前期比0.2%増の1兆5300億円、営業利益を同17.7%増の1100億円に下方修正している。これは、中国でのスマートフォン需要の減速が影響していると見る向きもある。業界全体で見れば、スマートフォン向けは依然として好調ではあるが、スマートフォンの成長に鈍化傾向がみられ始めている今、「スマートフォン頼り」の体質からの脱却が必要とされている。上記の村田製作所の増産を例に挙げれば、EMI除去フィルターはスマートフォンだけでなく、自動運転技術により電子化が進む自動車でも需要が高まっており、それに対応するためでもある。

 そのほか電子部品業界では、IoT(Internet of Things:モノのインターネット化)技術の拡大にともない、関連部品への取り組みが本格化しつつある。こうした新たな技術の拡大に乗り、いかに上手く「スマートフォン頼り」から脱却するかが、16年以降の各社の命運を分けるのではないだろうか。(編集担当:滝川幸平)