【電子部品業界の4~9月期決算】「スマホ部品」には強気と弱気が交錯し、通期見通しは上方修正も下方修正もある

2015年11月07日 21:11

 11月5日、電子部品大手7社の4~9月期(第2四半期/中間期)決算が出揃った。全社が増収で、2ケタ以上の最終増益(アルプス電気は3ケタ最終増益)という好決算だった。自動車の電装化、スマホやタブレット端末の高機能化、販売増に支えられ、「自動車とスマホ」は前期まで電子部品メーカーの好業績を支えた両輪だった。しかし、中国経済の変調で夏場からスマホのほうの勢いにかげりがみられる。今後の見通しについては各社それぞれ強気と弱気が入り交じり、通期業績見通しをアルプス電気、村田製作所は上方修正、京セラ、ロームは下方修正した(ロームは最終利益だけは上方修正)。

 電機業界でもスマホ向け部品の需要動向は、シャープ<6753>の液晶パネルには大打撃、ソニー<6758>のカメラ用画像センサーには影響軽微というように、製品によって大きな違いが出ている。技術に裏付けられた高付加価値化、代替品のない「オンリーワン」の製品づくりで、日本製電子部品は中国や新興国の景気や為替の先行き不透明感を乗り越えられるだろうか。

 ■「自動車とスマホ」に円安で大幅増益勢揃い

 4~9月期の実績は、日本電産<6594>は売上高20.0%増、営業利益19.1%増、最終純利益29.7%増の2ケタ増収増益。中間配当は前年同期から10円増の40円。連結売上高、営業利益、税引前利益、最終純利益の全項目で中間期ベース過去最高を更新した。四半期ベースでは2013年1~3月期の魔が差したような営業赤字から立ち直って以来、営業利益は10期連続増益。モーターは家電向けも自動車向けも好調が続き、家電向けの省エネ型小型モーターの新製品が好評。為替の円安も営業増益に約84億円寄与した。8月にスペインのプレス機器メーカー、アリサ・プレスを買収し、9月にアメリカのモーター制御装置メーカー、KB社の買収、イタリアのEMG社からの商業用モーター事業の取得を発表している。

 京セラ<6971>は売上高1.2%増、営業利益13.1%増、四半期純利益14.5%増、最終四半期利益16.4%増の大幅増益だが、4~6月期に比べると増益のペースが鈍った。中間配当は前年同期比10円増の50円。車載用カメラ部品など自動車向けは好調。太陽電池は、国内向けの家庭用は太陽光発電の買取価格引き下げ、電力会社の接続停止などが影響を及ぼし、産業用も受注で苦戦しているが、北米向けは売上を伸ばした。セラミックパッケージなどスマホ向け半導体部品は中国の景気減速で「中国製スマホが売れなくなり影響を受けている」(山口悟郎社長)という。機器事業の携帯電話は海外で上級モデルのモデルチェンジを進めたため販売台数が減った。

 ローム<6963>は売上高4.0%増、営業利益10.3%増、経常利益15.0%増、四半期純利益21.6%増の増収、2ケタ増益。中間配当は前年同期比20円増の65円とした。売上高は中国の成長鈍化を背景に当初予想を下回ったが、利益は為替レートが想定よりも円安傾向になったことで経常利益、当期純利益が当初予想から大幅に上回った。自動車向け、産業機器向けの半導体、スマホ向け小型部品が好調で、増収効果が減価償却費、研究開発費のコスト増を吸収した。

 アルプス電気<6770>は売上高11.8%増、営業利益64.2%増、経常利益47.7%増、四半期純利益124.9%増(約2.2倍)の2ケタ増収、3ケタ最終増益。中間配当は前年同期比5円増の10円とした。「自動車とスマホ」で収益を大きく伸ばし、円安が進む為替要因も味方した。スマホ用カメラの手ぶれ補正デバイスが9月発売のアップルの「iPhone6s」に採用され、中国製の高級スマホにも搭載されている。自動車向けは電装品用のセンサーやスイッチの受注が全く衰えない。中国の景気減速の影響をはっきり受けたのはグループ会社アルパインのカーナビぐらいだった。

 日東電工<6988>は売上収益5.6%増、営業利益39.6%増、税引前利益40.2%増、四半期利益52.6%増、最終四半期純利益51.3%増の2ケタ増益。中間配当は前年同期比15円増、当初予想から5円増の70円とした。4~9月期の売上高は2年連続で過去最高。アップルが9月に発売した「iPhone6s」のタッチパネルにも採用された光学フィルムでは、従来タイプより薄い新型フイルムを開発して薄型化が進むスマホのスペックに対応。高付加価値化が評価されて高価格帯の製品の受注が高水準で続くオプトロニクス事業は、営業利益の約8割を稼ぎ出している。為替の円安も海外売上高を押し上げた。工業用テープもワイヤーハーネス用保護テープなど自動車向けが伸びている。

 村田製作所<6981>は売上高28.0%増、営業利益70.7%増、税引前四半期純利益64.0%増、最終四半期純利益68.4%増。「スマホと自動車」向けの強さに為替の円安効果も加わり2ケタの大幅増収増益だった。中間配当は前年同期から20円増の100円。6割の増収をみせたスマホ向け部品ではコンデンサー、フィルターとともに、高速通信用のLTE通信モジュールなど超小型で付加価値が高い機能部品が好調。高水準の受注が続き、村田恒夫社長は「部品の搭載点数が多いLTE端末の普及が加速している」「スマホ向け部品の成長は2、3年続く」と話している。

 TDK<6762>は売上高17.0%増、営業利益63.2%増、税引前四半期純利益61.1%増、最終四半期純利益73.5%増という2ケタ増収、大幅増益。中間配当は前年同期比20円増の60円とした。スマホ向けはコンデンサーの他、高周波部品が伸びている。リチウムイオン電池など2次電池も堅調。自動車向けは電装部品のセンサー、コンデンサーが販売好調。為替の円安も増益に寄与している。

 ■需要減には高機能化、高付加価値化で対抗

 2016年3月期の通期業績見通しは、日本電産は売上高11.8%増、営業利益17.2%増、最終当期純利益18.4%増の3期連続の最高益で修正なし。前期と同じ期末配当40円も、前期比10円増の予想年間配当80円も変わらず。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は52.9%だった。運転支援システムの車載カメラやセンサーなど自動車向け、小型振動部品などスマホ向けは永守重信会長兼社長が「非常に強い」としたものの、中国の景気減速の影響がエアコン部品など一部に生じていて、先行きの不透明感が強いのが通期見通し据え置きの理由という。積極的な国内外のM&Aで2020年度までに売上高を5000億円上積みする方針は変わらない。

 京セラは通期業績見通しの売上高を700億円減らして4.8%増から0.2%増に、営業利益を500億円減らして71.3%増から17.7%増に、税引前当期純利益を440億円減らして51.0%増から14.9%増に、当期純利益を350億円減らして3.6%増から26.6%減に、それぞれ下方修正した。期末配当予想は前年同期比で10円減の50円、予想年間配当は前期と同じ100円。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は59.7%だった。中国経済の減速が懸念され、ヨーロッパや新興国の経済の先行きにも不透明感が高まっているという前提で、デジタルコンシューマ機器の生産台数は期初の想定を下回る見通し。自動車関連、産業機器関連も拡大ペースが鈍化すると予想し、業績見通しを下方修正した。最終利益の減益には電子デバイス事業での構造改革費用計上も影響する見通し。

 ロームは通期業績見通しを、売上高は250億円減らして7.0%増から0.1%増に下方修正、営業利益は80億円減らして8.2%増から12.4%減に下方修正。経常利益は32.5%減で修正なし。当期純利益は10億円上積みして33.8%減から31.6%減に上方修正した。前期比20円減の予想期末配当65円、前期と同じ予想年間配当130円は修正なし。4~9月期の通期見通しに対する進捗率は、経常利益は68.8%、最終利益は84.4%でともに50%を大きくオーバーしている。下方修正の理由としては中国の成長鈍化とそのアジア諸国への影響、パソコン市場の飽和、スマホ、自動車、産業用機器向け市場のゆるやかな調整局面入りを挙げている。

 アルプス電気は通期業績見通しについて、売上高を110億円上積みして2.5%増から3.9%増に、営業利益を60億円上積みして1.8%増から13.0%増に、経常利益を50億円上積みして5.4%減から3.3%増に、当期純利益を80億円上積みして19.5%増から42.5%増に、それぞれ上方修正した。経常利益の予想は減益から増益に変わり、最終利益の上方修正は今期2度目になる。4~9月期の最終利益の通期見通しに対する進捗率は58.8%。予想期末配当は前期と同じ10円、予想年間配当は前期から5円増の20円となっている。上方修正の理由は為替の円安と、中国の景気減速の影響を受けたとしても「自動車とスマホ」は堅調に推移すると予想されるため。(編集担当:寺尾淳)