【今週の展望】雇用統計のあるSQ週でも穏やかに始まるか?

2016年01月03日 20:05

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東京は2016年、世界で最初に開く主要市場。「日出づる処」らしく日の出の勢い、とはいかず、静かなスタートになりそう。穏やかな年明けも、悪くない。

 1月第2週(1月4~8日)は4日の「大発会」に始まり5日間の取引。1日は世界のほとんどの金融市場が休場し、2日、3日は土曜、日曜という曜日の関係で、今年に限って東京市場は世界の主要市場で2016年、一番最初に開く。「日出づる処」らしく日の出の勢いの値動きをみせるか? しかしいきなりマイナーSQ週で、8日にはアメリカの雇用統計も発表され、日射しをさえぎる雲も多い。

 世界の主要株式市場の休場日は、4日にニュージーランドのウェリントン市場が休場する。お正月休み(通常1、2日)の振替休日で休めるというから、うらやましい?

 国内の経済指標、イベントは、政策がらみで通常国会に注目。夏に参議院選挙があり後の日程が詰まっている関係で、1月召集が定着した1992年以降では異例の早期召集になる。政府からは2015年度補正予算案の他、TPP関連7法案などが提出される。その後には2016年度予算案の審議がある。

 4日には東証の取引開始時に「大発会」のセレモニーがある。鐘を鳴らすゲストは例年なら大臣が務めるが、今年は同じ日に通常国会が召集されるためか晴れ着の東証の女性職員が鳴らす予定。4日には百貨店各社の12月売上高速報、5日には12月の新車販売台数、7日には東京都心部オフィス空室率、8日には景気動向指数速報値が、それぞれ発表される。8日はオプション取引、日経225ミニ先物などの「マイナーSQ(オプションSQ)」の清算日。

 主要銘柄の決算発表は2月期決算の小売業の3~11月期決算が続々発表される。

 5日はカネコ種苗<1376>、ケーヨー<8168>、ベルク<9974>、アオキスーパー<9977>。6日はABCマート<2670>、わらべや日洋<2918>、スギHD<7649>、ヨンドシーHD<8008>、日本BS放送<9414>、天満屋ストア<9846>。7日はキューピー<2809>、セブン&アイHD<3382>、東京個別指導学院<4745>、良品計画<7453>、スター精密<7718>、ファミリーマート<8028>、イズミ<8273>、東武ストア<8274>、ファーストリテイリング<9983>。

 8日はジェイコムHD<2462>、CVSベイエリア<2687>、山下医科器械<3022>、キリン堂HD<3194>、バイク王&カンパニー<3377>、日本エンタープライズ<4829>、USEN<4842>、三協立山<5932>、ベルシステム24HD<6183>、ツインバード工業<6897>、ポプラ<7601>、壱番屋<7630>、オンワードHD<8016>、島忠<8184>、チヨダ<8185>、井筒屋<8260>、ユニーGHD<8270>、ポケットカード<8519>、乃村工藝社<9716>、吉野家HD<9861>。

 新規IPOは3月までなく、春まで冬眠中。

 海外の経済指標、イベントは、8日のアメリカの雇用統計が最大の注目。良い数字が出れば、「今年は年4回」と予想されているアメリカの追加利上げに向けてはずみがつく。アメリカの4日の製造業、6日の非製造業のISM景気指数も重要な指標。

 3日にはフィッシャーFRB副総裁、サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁(2016年FOMC投票権あり)の年頭講演。ちなみに2016年にFOMC投票権を持つ連銀総裁はNY連銀のダドリー総裁、セントルイス連銀のブラード総裁、カンサスシティ連銀のジョージ総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁、ボストン連銀のローゼングレン総裁の5名。他に議長、副議長と理事3名。

 4日には中国の12月の財新の製造業PMI、ユーロ圏の12月の製造業PMI改定値、ドイツの12月の消費者物価指数速報値、アメリカの12月のISM製造業景気指数、5日にはドイツの12月の雇用統計が発表される。

 6日には中国の12月の財新サービス業PMI、ユーロ圏の12月のPMI改定値、アメリカの12月のADP雇用統計、ISM非製造業景況指数が発表される。利上げを決めた12月15、16日のFOMC議事録が公表される。6~9日にラスベガスで世界最大の家電見本市「CES」が開催される。

 7日にはユーロ圏の11月の小売売上高、12月の景況感指数、アメリカの消費者信頼感指数、8日にはドイツの12月の貿易収支、アメリカの12月の雇用統計(非農業部門雇用者数、失業率など)、9日には中国の人民元建て新規貸出額、マネーサプライが発表される。

 アメリカの主要企業の決算発表は、6日はモンサント、7日はベッド・バス・アンド・ビヨンド、コンステレーションズ・ブランズが予定している。10~12月期決算(2015年通期決算)の発表が本格化するのは、アルコアやインテルやシティやJPモルガンやウェルズ・ファーゴがある来週から。

 2015年の最終売買日、12月30日の終値は19033.71円だった。そのテクニカル・ポジションを確認すると、移動平均線は18889円の5日線と18826円の75日線は下に、19307円の25日線と19508円の200日線は上にある。夏の終わりの「チャイナ・パニック」からの回復過程で右肩上がりトレンドだった10、11月とはうって変わって、12月は1日の終値20012円、15日の安値18562円、18日の高値19869円、翌営業日21日の安値18651円と波瀾万丈の乱高下を演じたため、移動平均線の順序が乱れている。こんな〃乱世〃には突然変異のような現象が現れやすいことを一応、心しておいたほうがいいだろう。

 ボリンジャーバンドは、25日線-1σの18860円と+1σの19753円の間の「ニュートラル・ゾーン」にある。基本的に上にも下にも動きやすいポジションではある。

 日足一目均衡表の「雲」は12月30日時点で18430~19312円にあり、日経平均終値は雲の中にスッポリ入っている。クリスマスから年末年始にかけての薄商いとあいまって値動きが緩慢だったのも、ある意味うなずける。今週の雲の上限は、週初は19351円で始まり週末は19593円まで242円も上昇し、ピークをつける。雲の上に抜けるのはますます難しくなる。雲の下限は週初は18447円、週末は18456円で9円しか上昇せず、雲はどんどん厚くなる。2016年の日経平均は雲の中で始まり、当分、上に抜けられそうにない。

 30日時点のオシレーター系指標を見ると、その前週は3つ点灯していた「売られすぎ」シグナルが、3日続伸、週間264円上昇で1つに減っている。ストキャスティクス(9日・Fast/%D)が27.4で、売られすぎの目安の30を下回っていた。それ以外はニュートラルで、たとえばRCI(順位相関指数)はプラスでもマイナスでもない0.0で、騰落レシオは79.9、25日移動平均乖離率は-1.4%、RSI(相対力指数)は45.1、サイコロジカルラインは5勝7敗で41.7%、ボリュームレシオは39.9だった。数値的には完全ニュートラルより少し下に位置する。

 12月の〃乱世〃の余韻が残っているので1月は大幅上昇も大幅下落もありうるが、テクニカル指標に基づいて今週について言えば、大納会の12月30日に12月SQ値18943円を超え、終値でも乗せることができた19000円を基点に、どこまで上積みできるかだろう。年末に上値を抑えられていた分、年始はバネが効いて上がるという見方もできる。

 その今週、内外で大きな影響を及ぼしそうな材料は、8日のアメリカ雇用統計待ちの様子見、小売業大手の決算の下振れショックの可能性、通常国会の政策論議、11日の月曜日が「成人の日」の祝日で8日の金曜日は3連休前になるので利益確定売りが厳しくなる、というところか。いずれも週の後半になるほどその影響が大きくなる。

 大発会の4日は昔であれば築地の魚河岸の初セリのような「ご祝儀買い」が入ったりしたが、外国人投資家の参加が増えた今では影が薄くなった。4日は海外市場がまだ休んでいるため年明けは手探りで静かに始まりそうで、週前半は値動きはまだ小さいだろう。そこに波乱を起こす要素を挙げるとすれば、SQ週の火曜、水曜(5日、6日)の「鬼門」か? 中国の経済統計を受けた上海市場の変動か? 昨年夏の終わりに世界のマーケットにパニックを引き起こした中国は、今年も引き続き警戒対象だ。

 週の後半は海外市場も出揃って振幅が大きくなりそうだが、心理的節目の19000円、12月SQ値の18943円が週前半の下値の第1防衛線、75日線の18826円、12月25日の終値18744円が週後半の下値の第2防衛線になると想定する。

 一方、上値のほうはNY市場最大の敵「原油安」、東京市場最大の敵「円高」の重しからは年が明けても解放されず、天井が低くてまるで洞穴探検をしているような感覚は残るだろう。そのため200日移動平均の19508円は高すぎるが、25日移動平均の19307円であれば座りがいい。そのため日足一目均衡表の雲の上限(19351~19513円)は抜けられず、今週は雲の中にとどまると想定する。「雲」を抜けてその向こうの青空を仰ぎ見る可能性が出るのは、マイナーSQもアメリカの雇用統計も日本の3連休も全て通過した来週になると思われる。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは18750~19300円とみる。穏やかな年明けも、悪くない。(編集担当:寺尾淳)