東証が発表した22日時点の需給データを確認しておくと、信用買い残は2週連続の減少で2346億円減の2兆9692億円となり、昨年6月5日以来の3兆円割れ。信用売り残は4週連続の減少で152億円減の 5150億円。信用倍率(貸借倍率)は5.76で15日時点の6.04から減少したが、それでも依然高水準。裁定買い残は3週連続の減少で、昨年12月30日時点の3.3兆円から2.1兆円まで急減した。2.1兆円は昨年10月2日以来の低水準で、1月の東京市場が外国人売りで「焼け野原」になったことを物語る。
その外国人売りが前週も衰えていなかったことを示すのがカラ売り比率で、25日は39.8%だったが、日経平均が402円安だった26日は昨年9月以来の43.0%まではね上がった。27日は41.8%、28日は41.2%。29日は40%を切って37.8%まで下がっている。
28日に東証が発表した1月第3週(18~22日)の投資部門別株式売買動向をみると、外国人は3週連続の1902億円の売り越し。個人は3週連続の277億円の買い越し、信託銀行は9週連続の1821億円の買い越しで、東京市場は「外国勢の売り対日本勢の買い」という様相を呈していた。そんな需給パターンが崩れる時が、株価の反転の始まりか。29日に41億株の超大商い、乱高下の末に476円高で終え、「踏み上げ(買い戻し)」も出たらしくカラ売り比率が40%を大きく割り込んだのは、はたして需給の転換点なのか?
だが、29日の日銀会合での決定に対しては、黒田バズーカ第1弾、第2弾の時とは、マーケットの反応が明らかに違っている。
29日の為替、株価の乱高下が示したように、今回の日銀の追加緩和「マイナス金利導入」は、日銀当座預金全部ではなく一部で規模がそれほど大きくないこと、それなりの副作用を伴うこと、ECB(欧州中央銀行)が2014年6月にそれを行ったがデフレ退治がうまくいっていないこと、時価総額が大きくTOPIXへの影響大の銀行業界に負担を強いることなどで、マーケットは必ずしも手放しで歓迎してはいない。黒田日銀過去2回の量的緩和で行われた国債やETFやJ-REITの買入枠の拡大とは中身が異なる。だから今週、野山に一気に春が訪れるようにマーケットの景色が一変するようなことは、ないだろう。
もし為替のドル円が120円以上の水準をキープして味方したとしても、日経平均が18000円を超えてさらに上昇していく「快進撃」とはいかず、アメリカの雇用統計の発表前で様子見ムードが漂いやすい基調もあって、上値は抑えられやすいだろう。せいぜい18200円程度までが限界ではないか。
今週もマーケット環境は大して改善していない。人民元レートや原油先物価格による中国やアメリカのマーケットの混乱、国内の経済指標の悪化、企業決算の不振、地政学的リスクなど、何かをきっかけに東京市場にも大きな反動局面が一度はくると思われる。その際の下値のメドは前週、毎日安値では割り込んだが26日以外の4日間は終値では乗せていた心理的な節目、17000円とみる。
ボリンジャーバンドもオシレーター系指標もほぼニュートラルなポジションなので、今週は29日終値から上下に500円以上、振れることができる。波乱の1月相場のボラティリティの高さは、2月に入っても当分の間、続くことだろう。
ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは17000~18200円とみる。空穏やかで心落ち着ける春には、まだ早い。(編集担当:寺尾淳)