増加する子供の花粉症。罹患率はアトピーの約3倍?

2015年01月31日 17:14

 目がかゆい、鼻がムズムズする……こんな症状が現れはじめたら、憂鬱な気分になる人も多いだろう。今年もそろそろ、花粉の季節に突入する。花粉症はご存知の通り、スギやヒノキなどの花粉が体内に入ることで免疫が過剰反応してしまうアレルギー性の疾患。日本人の4人に1人は花粉症患者といわれる、深刻な国民病だ。厚生労働省も昨年、口に薬液を含む新しいタイプのスギ花粉症治療薬を初めて承認し保険適用を開始するなど、対策を強めている。

 花粉の中でもとくに日本人を悩ませているのがスギ花粉だ。花粉症を引き起こす植物は60種以上が確認されているが、その中でもスギは突出しており、花粉症患者の約70%はスギ花粉症と推察されている。

 スギ花粉症がそれほどまでに流行しているのには、大きく2つの原因が考えられる。それはスギ花粉の飛散距離とスギの木の分布だ。スギの花粉はなんと数十キロメートル以上もの飛散距離を持つと言われており、そのため、山野から遠く離れた大都市圏でも多くの花粉症患者を発症させてしまう。しかも、第二次世界大戦の終戦後、建築資材確保のための国策としてスギの植林が盛んに行われたため、日本国中どこに行ってもスギの木は生えている。つまり、日本に住まう限りスギ花粉から逃れるのは難しいのだ。

 また、花粉の飛散量だけが必ずしも花粉症患者の数に比例するわけではない。他にも大気汚染やアスファルト路面からの二次飛散、食生活などの生活習慣も花粉症の発症に大きく影響していると考えられる。

 スギ花粉症が初めて報告されたのは1964年。その後、70年代に入ってから患者数が著しく増加している。さらに近年、大きな問題になりつつあるのが子供の花粉症だ。

 これについては、目薬の製造販売メーカー最大手のロート製薬株式会社?4527?が昨年12月、花粉症対策への啓発を目的に0~16歳の子どもを持つ父母を対象とした「子どもの花粉症」アンケート調査を実施している。回答のあった父母1,522人及びその子ども2,452人の症状や実態等について、集計・分析を行ったところ、父母が実感する「子どもの花粉症」は、2012年の25.7%から2014年32.7%へ増加していることがわかった。この数値は、アトピー性皮膚炎の罹患率10.6%の約3倍以上だ。また、発症年齢についての質問では、「5歳までに発症」が43.8%、「10歳までに発症」が80.4%となっており、花粉症の低年齢化が進んでいることが伺える。さらに、目の充血やかゆみがあっても、5人に1人は目薬を使っていないことがわかったという。子どもの場合、目薬に苦手意識を持つ子も多く、親も点眼には苦労しているようだ。

 しかし、我慢できずに目の周りや目の粘膜を手でかいたり、こすったりしてしまうと、粘膜が傷ついたり炎症が悪化する恐れがある。また、花粉症は集中力低下など生活の質への影響も心配されている。子どもの場合は知能や成績にも大きく影響するだろう。とくに幼い子どもは自分で花粉症を自覚できない。花粉を回避したり、屋内への花粉侵入の予防などの配慮ももちろん大切だが、何かで気を紛らわせたり、遊びながら点眼してみたり、親が工夫をして子どもの目薬ケアをしっかり行ってほしい。(編集担当:石井絢子)